認知症の中で最も頻度が高いアルツハイマー病の治療薬として現在本邦で承認されている薬剤は、3種類のコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とメマンチンの4剤である。実臨床においては、神経変性疾患の多因子性病因に対応するため、単剤療法後の次のステップとして併用療法が用いられる。また、2021年6月に米国で迅速承認されたaducanumabは、脳内のアミロイドβ(Aβ)カスケードを標的とする初の疾患修飾療法(DMT)として注目されている。東京慈恵会医科大学の永田 智行氏らは、アルツハイマー病治療に対する薬物療法の組み合わせについて報告した。Expert Opinion on Pharmacotherapy誌2022年4月号の掲載。
主な結果は以下のとおり。
・アルツハイマー病の病因は、コリン作動性仮説とアミロイドカスケード仮説が提唱されている。
・これらの仮説に基づく単剤療法の有効性は限られており、推定原因であるタンパク質関連の神経変性、神経伝達物質、神経炎症など、複雑なアルツハイマー病の病因に対し包括的に対処するためには、併用療法によるアプローチが有用な可能性がある。
・神経変性プロセスおよび機能低下に対する初回または併用療法によるアプローチ上乗せの有効性を調査したところ、対症療法として承認されている抗認知症薬4剤のうち、1種類のChEIとメマンチンの併用療法は、症状重症度が中程度の患者における機能改善に有効であることが示唆されている。
・今後、DMT、対症療法、神経再生などを組み合わせた治療戦略が有用となることが期待される。
(鷹野 敦夫)