新型コロナウイルス感染症の発症予防における新型コロナワクチンの有効性を、全国の医療機関において検査陰性デザインを用いた症例対照研究を行い(VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2])1)、国内においても海外で報告されたものとほぼ同等の有効性が認められた。4月22~23日にオンラインで開催された第96回日本感染症学会総会・学術講演会で、長崎大学の前田 遥氏が発表した。なお、本発表に含まれるデルタ株流行期の結果については、Clinical Infectious Diseases誌オンライン版2022年4月19日号2)にも掲載されている。
2021年7月1日から開始しているサーベイランス研究結果の一部として、本報告では2021年7月1日~9月30日(デルタ株流行期)と2022年1月1日~2月28日(オミクロン株流行期)の2期における研究結果を報告した。それぞれ全国13ヵ所の医療機関で新型コロナウイルス感染症を疑う症状で医療機関を受診した患者(16歳以上)を対象に、検査陰性デザインを用いた症例対照研究を用いてワクチンの発症予防における有効性を評価した。
主な結果は以下の通り。
【デルタ株流行期】
・解析対象は1,936例で、うち検査(核酸増幅法検査もしくは抗原定量検査)陽性396例(20.5%)、年齢中央値49歳、基礎疾患あり34.0%、ワクチン未接種42.0%、2回接種完了32.2%、陽性者における未接種73.2%、2回接種完了6.6%だった。
・16~64歳において、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性は88.7%(95%CI:78.8~93.9%)。2回接種完了から91日以上経過した群では、90日以内の群と比較して有効性の低下が見られた。
・16~64歳において、2回接種完了後の有効性は、ファイザー製:86.7%(95%CI:73.5~93.3%)、モデルナ製:96.6%(95%CI:72.8~99.6%)となり、ファイザー製よりモデルナ製のほうが、有効性が高い結果となったが、有意差は認められなかった。
・65歳以上に関しては、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種による有効性は90.3%(95%CI:73.6~96.4%)であり、若年者とほぼ同等の効果が見られた。
【オミクロン株流行期】
・解析対象は16~64歳の2,000例で、うち検査陽性758例(37.9%)、年齢中央値35歳、基礎疾患あり16.1%、ワクチン未接種13.4%、2回接種完了75.8%、3回接種完了6.8%だった。
・16~64歳において、ファイザー製もしくはモデルナ製ワクチンの2回接種完了による発症予防の有効性は42.8%(95%CI:23.6~57.1%)となり、デルタ株流行期と比較して有効性の低下が認められた。
・3回接種完了による発症予防の有効性は68.7%(95%CI:37.1~84.4%)。追加接種による有効性の上昇が認められた。
本研究により、デルタ株流行期では、ワクチン2回接種完了による高い有効性が確認された。一方、オミクロン株流行期では、デルタ株流行期と比較してワクチン2回接種完了の有効性の低下が見られた。3回接種完了の有効性は、人種や社会背景が異なる日本でも、英国・米国の報告と同等であった。
本研究については今後も継続し、随時結果がアップデートされる予定。なお、オミクロン株流行期に関して、本解析で集計できていない症例が多数あり、オミクロン株流行期の解析結果は今後変動する可能性があるという。
(ケアネット 古賀 公子)