愛知・国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、高齢のアルツハイマー病(AD)患者において、患者の出生した季節がADの病理学的脆弱性に及ぼす影響を評価するためPETを用いた検討を行った。その結果、秋冬に出生した人は、春夏に出生した人と比較し、タウ蓄積が少ないことが明らかとなった。これは、秋冬に出生した人のタウ病理に対する脆弱性を示唆しており、寒い季節関連のリスク因子による周産期または出生後の脳損傷が影響している可能性があるという。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年4月26日号の報告。
Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiativeのデータセットを分析した。分析対象は、認知機能正常者234例、軽度認知障害患者(MCI)114例、AD患者38例であった。アミロイドβ(Aβ)/タウ蓄積の指標として18F-AV-45および18F-AV-1451の標準化取込値比(SUVR:standardized uptake value ratios)を用い、共分散分析により春夏の出生と秋冬の出生について群間比較を行った。さらに、出生した季節が18F-AV-45および/または18F-AV-1451のSUVRの予測因子であるかを検証し、その差を明らかにするため、多重線形回帰分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・出生した季節の違いは、18F-AV-1451のSUVRの予測因子であった。
・タウ蓄積に影響を及ぼす可能性がある年齢、性別、教育年数、ADAS-cogスコアで調整した後、認知機能正常者およびMCI/AD患者いずれにおいても、秋冬に出生した群は春夏に出生した群よりも、18F-AV-1451のSUVRが低値であった。
(鷹野 敦夫)