初期診断で切除不能なRAS/BRAFV600E変異肝臓に転移した大腸がん肝転移(CRLM)に対して、トリプレット(FOLFOXIRI)と抗VEGF抗体ベバシズマブの併用療法は、ダブレット(FOLFOX/FOLFIRI)とベバシズマブの併用療法に比べて無増悪生存期間(PFS)や治癒切除 (R0/R1)率を改善させることが第III相無作為化試験(CAIRO5試験)から示された。オランダ・University Medical Center UtrechtのCornelis J. A. Punt氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。
初期診断で切除不能CRLMと診断されたが、腫瘍縮小により根治切除が可能になる場合がある。そのような患者に対しては薬物による導入全身薬物療法が用いられる。しかし、適切な全身導入療法を評価した研究はない。CAIRO5試験は、最適な全身導入療法について検討することを目的とした臨床試験である。
・対象:切除不能なRAS/BRAFV600E変異and/or右側のCRLM患者(291例)
・試験群:FOLFOXIRI+ベバシズマブ2週ごと12サイクルまで→維持療法(144例)
・対照群: FOLFOX/FOLFIRI+ベバシズマブ2週ごと12サイクルまで→維持療法(147例)
・評価項目:
[主要評価項目]PFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、AE、R0/R1切除率など
主な結果は以下のとおり。
・中央値41ヵ月の観察期間において、PFS中央値は試験群で9.0ヵ月、対照群で10.6ヵ月であり、試験群で有意な延長を認めた(ハザード比:0.77、95%信頼区間:0.60~0.99、p=0.038)。
・全生存期間中央値は両群とも未到達であった。
・ORRは試験群で53.5%、対照群で33.3%であった(p<0.001)。
・Grade3以上のAEは試験群で75.7%、対照群で59.2%であり、試験群で有意に高かったが(p=0.003)、いずれのAEも管理可能であった。
・アブレーションを含めた切除術は試験薬群の57%、対照群の46%に施行された(p=0.08)。R0/R1切除率は試験群で51%、対照群で37%であり、試験群で有意に高かった(p=0.02)。
初の前向き無作為化試験の結果、トリプレット化学療法+ベバシズマブは初期に切除不能と診断されたRAS/BRAFV600E 変異and/or右側のCPLM患者に対し、PFSやORRを改善し、R0/1切除±アブレーションの実施率を増やした。
(ケアネット)