統合失調症においては、患者だけでなくその家族や社会に多大な人的および経済的負担がのしかかり、併存症状の有無によりその負担は大きく影響されるといわれている。住友ファーマの馬塲 健次氏らは、日本における統合失調症の生涯有病率を推定し、併存症状(抑うつ症状、睡眠障害、不安障害)の有無による患者の健康関連QOL、仕事生産性、間接費の評価を行った。その結果、日本人統合失調症患者にみられる併存症状は、QOL、仕事生産性、間接費に大きな影響を及ぼすことが報告された。BMC Psychiatry誌2022年6月18日号の報告。
2019年「国民健康・栄養調査」で収集されたデータを用いて、2次分析を実施した。PHQ-9スコア、自己報告による睡眠障害および不安障害の結果により、統合失調症患者を分類した。生涯有病率の推算は、分子に統合失調症診断患者数、分母に調査回答者数を用いて行った。健康関連QOLの評価には、SF-12v2、EQ-5Dを用いた。仕事生産性と年間間接費は、WPAI(Work Productivity and Activity Impairment)と月給を用いて評価した。多変量解析には、一般化線形モデルを用いた結果の比較を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象は、統合失調症患者178例(平均年齢:42.7歳、推定生涯有病率:0.59%[95%CI:0.51~0.68])であった。
・睡眠障害、より重度な抑うつ症状、不安障害が併存している患者は、これらの併存症状がない患者と比較し、健康関連QOLの低下、より高い欠勤率、プレゼンティズム、総仕事生産性と活動の障害が認められ、間接費も約2倍となっていた。
(鷹野 敦夫)