免疫療法を受けたがん患者は、免疫系の活性化により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるサイトカインストームがより多く発生する可能性がある。今回、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのZiad Bakouny氏らが、がん患者におけるベースラインの免疫抑制と免疫療法、COVID-19の重症度およびサイトカインストームとの関連を調べた。その結果、COVID-19を発症したがん患者において、免疫抑制と免疫療法のどちらか片方のみでは重度の感染症やサイトカインストームのリスクは増加せず、ベースラインで免疫抑制のあるがん患者に免疫療法を実施すると、COVID-19の重症化やサイトカインストームの発生につながるリスクが高いことが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2022年11月3日号に掲載。
本研究は後ろ向きコホート研究で、対象は2020年3月~2022年5月にCOVID-19 and Cancer Consortium(CCC19)レジストリ(現在または過去にがん診断を受けたCOVID-19患者の国際的な多施設集中型レジストリ)に報告された1万2,046例。解析対象は、PCRまたは血清学的所見でSARS-CoV-2感染が確認されたactiveながん患者もしくはがん既往のある患者で、COVID-19診断前3ヵ月以内に免疫療法(PD-1/PD-L1/CTLA-4阻害薬、二重特異性T細胞誘導抗体、CAR-T細胞療法)を含むレジメンで治療された免疫療法群、免疫療法以外(細胞傷害性抗がん剤、分子標的療法、内分泌療法)のレジメンで治療された非免疫療法群、未治療群に分けた。主要評価項目は、COVID-19の重症度(合併症なし、酸素を要しない入院、酸素を要する入院、ICU入院/機械的人工換気、死亡の5段階)、副次評価項目はサイトカインストームの発生とした。
主な結果は以下のとおり。
・全コホートの年齢中央値は65歳(四分位範囲:54~74)、女性が6,359例(52.8%)、非ヒスパニック系白人が6,598例(54.8%)であった。免疫療法群は599例(5.0%)、非免疫療法群は4,327例(35.9%)で、未治療群は7,120例(59.1%)であった。
・全コホートでは、免疫療法群はCOVID-19重症度(調整オッズ比[aOR]:0.80、95%CI:0.56~1.13)およびサイトカインストーム発生(aOR:0.89、95%CI:0.41~1.93)で未治療群と差が認められなかった。
・ベースラインが免疫抑制状態で免疫療法を受けた患者では、未治療群と比較し、COVID-19重症度(aOR:3.33、95%CI:1.38~8.01)およびサイトカインストーム発生(aOR:4.41、95%CI:1.71~11.38)が悪化していた。
・ベースラインが免疫抑制状態で非免疫療法を受けた患者も、未治療群と比較し、COVID-19重症度(aOR:1.79、95%CI:1.36~2.35)およびサイトカインストーム発生(aOR:2.32、95%CI:1.42~3.79)が悪化していた。
(ケアネット 金沢 浩子)