肺炎およびフレイルと認知症リスク~日本老年学的評価研究

提供元:ケアネット

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公開日:2022/12/09

 

 最近、いくつかの研究において、フレイルの増加による認知機能低下および認知症のリスク増加に、肺炎が影響を及ぼす可能性が報告されている。大阪大学のParamita Khairan氏らは、肺炎歴とその後の認知症リスクとの関連を調査した。その結果、肺炎歴の有無にかかわらずフレイルおよびプレフレイル(フレイルの前駆状態)が、日本人高齢者の認知症リスク増加と関連していることが示唆された。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2022年11月号の報告。

 日本老年学的評価研究のプロスペクティブコホート研究に参加した65歳以上の日本人高齢者9,952人を対象として、2013年から2019年の期間にフォローアップを行った。認知症の診断は、公的介護保険レジストリより収集した。ベースライン調査実施(2013年)の1年前までを肺炎歴として収集した。潜在的な交絡因子で調整した認知症リスクのハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。原因別ハザードモデルを用いて、競合リスク分析を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・6年間のフォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、939人であった。
・肺炎歴と認知症リスクとの関連は認められなかった(HR:1.20、95%CI:0.81~1.78)。
・プレフレイルおよびフレイルを有する高齢者は、認知症リスクが高かった。
 ●プレフレイル(多変量HR:1.75、95%CI:1.48~2.07)
 ●フレイル(多変量HR:2.42、95%CI:2.00~2.93)
・肺炎歴とフレイルを有する高齢者の認知症リスクは、最も高かった(多変量HR:2.30、95%CI:1.47~3.62)。
・肺炎歴がなくフレイルを有する高齢者の認知症に対する多変量HRは1.95(95%CI:1.66~2.28)であった。
・一方、フレイルがなく肺炎歴を有する高齢者の認知症に対する多変量HRは1.64(95%CI:0.68~3.99)であった。

(鷹野 敦夫)