認知症リスクの低減のために、余暇の認知活動が推奨されている。大阪大学のAhmed Arafa氏らは、日本人高齢者における認知症リスクとさまざまな音楽活動との関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2021年4月6日号の報告。
日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトに参加した65歳以上の高齢者5万2,601人を対象に、縦断的データを分析した。楽器演奏、カラオケ、合唱、民謡などの音楽活動についてアンケートを用いて評価した。認知症の診断には、介護保険制度で標準的に使用される認知症尺度を用いた。Cox回帰を用いて、音楽活動に関連した認知症のハザード比および95%信頼区間(CI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・フォローアップ期間の中央値は、5.8年であった。
・男性における音楽活動未実施者と比較した認知症のハザード比は以下のとおりであった。
●1つの音楽活動を実施:0.94(95%CI:0.82~1.07)
●複数の音楽活動を実施:0.59(95%CI:0.32~1.10)
・女性における音楽活動未実施者と比較した認知症のハザード比は以下のとおりであった。
●1つの音楽活動を実施:0.79(95%CI:0.69~0.90)
●複数の音楽活動を実施:0.89(95%CI:0.63~1.26)
・楽器の演奏およびカラオケを行っていた高齢者は、音楽活動未実施者と比較し、男性では認知症リスクがわずかに減少し、女性では認知症リスクの有意な減少が認められた。
【男性】
●楽器の演奏:0.70(95%CI:0.45~1.02)
●カラオケ:0.90(95%CI:0.79~1.04)
【女性】
●楽器の演奏:0.75(95%CI:0.58~0.98)
●カラオケ:0.77(95%CI:0.68~0.89)
著者らは「音楽活動、とくに楽器の演奏やカラオケは、日本人高齢女性の認知症リスク低下との関連が認められた」としている。
(鷹野 敦夫)