毎年、年末になると餅による窒息の注意が喚起されるが、餅の胃内滞留はほとんど知られていない。胃酸が餅を溶かすと誤解されているが、雑煮など温かい汁物の中では柔らかい餅が、胃内の温度では胃液で溶けない程度に硬くなる。そのまま餅が胃内に滞留すると、胃潰瘍や胃穿孔を引き起こす可能性があるので、小児や高齢者以外も注意が必要だ。今回、雑煮の餅を噛まずに飲み込んで胃内に滞留し、腹痛で来院した症例について、名手病院(和歌山県紀の川市)の川西 幸貴氏らがClinical Case Report誌オンライン版2022年12月5日号に報告した。
症例は、腹痛を主訴に受診した65歳女性。腹部CTで胃内に多層の円弧状の高密度な物体を認めた。患者は雑煮の3cmの餅を数個、十分に噛まずに食べていたという。緊急内視鏡検査では原形を留めた丸餅10個が確認され、5日間もそのままの状態だった。本症例に対して、内視鏡でスネアを用いて電流を流さずに餅を1cm以下にスライスし、消化酵素配合剤を処方した。2日後、内視鏡検査で餅はすべて消失し、腹部CTでも腸内に餅は残存していなかった。
川西氏らは「餅が胃内に滞留した場合は早急に内視鏡的処置が必要なため、消化器内科医だけでなく、プライマリケア医や救急医も治療法について熟知しておく必要がある」としている。
(ケアネット 金沢 浩子)