HER2+乳がん脳転移例、tucatinib追加でOSを約9ヵ月延長(HER2CLIMB)/JAMA Oncol

提供元:ケアネット

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公開日:2023/01/11

 

 HER2陽性(ERBB2+)転移乳がん(MBC)患者の最大50%が脳転移を有し、予後不良とされている。脳転移症例を含むHER2+MBCに対するトラスツズマブ、カペシタビンへのtucatinib追加投与の有効性を検討したHER2CLIMB試験について、探索的サブグループ解析の最新フォローアップデータを、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏らがJAMA Oncology誌オンライン版2022年12月1日号に報告した。

 今回の探索的サブグループ解析の評価項目は、脳転移症例における全生存期間(OS)およびCNS無増悪生存期間(CNS-PFS)、ベースライン時点で測定可能な頭蓋内病変を有する症例における頭蓋内奏効率(ORR-IC)および頭蓋内奏効期間(DOR-IC)、全症例における脳内新病変の非出現期間など。OSのみ事前に設定されていた。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時点で、612例中291例(47.5%)が脳転移を有していた。
・脳転移症例の年齢中央値は52歳(22~75)、289例(99.3%)が女性だった。
・追跡期間中央値29.6ヵ月(0.1~52.9)において、OS中央値はtucatinib併用群21.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:18.1~28.5)vs.プラセボ併用群12.5ヵ月(95%CI:11.2~16.9)となり、9.1ヵ月延長した。
・tucatinib併用群ではプラセボ併用群と比較して、CNS-PFS(9.9ヵ月vs.4.2ヵ月)およびORR-IC(47.3% vs.20.0%)においてより高い臨床的有用性を示した。
・DOR-ICは、8.6ヵ月(95%CI:5.5~10.3)vs.3.0ヵ月(95%CI:3.0~10.3ヵ月)だった。
・全症例における脳内新病変の非出現期間中央値は、tucatinib併用群24.9ヵ月vs.プラセボ併用群13.8ヵ月となり、11.1ヵ月延長した。最初の進行部位となる新たな脳病変の発生または死亡リスクは、tucatinib併用群でプラセボ併用群に対して45.1%減少した(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.85、p=0.006)。

 著者らは、tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用は、新たな脳病変の発生リスクを低減しながらOSを改善することが明らかとなり、脳転移症例を含むHER2+MBC患者に対するこの治療選択肢の重要性がさらに支持されることになったとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)