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かかりつけ医の機能が高いとコロナ入院リスクが低下/慈恵医大

病気をしたときに何でも相談できる「かかりつけ医」が身近にいると心強い。ましてや、現在のように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下という環境では、かかりつけ医から的確な助言が受けられると患者は期待している。
COVID-19とかかりつけ医の関連について、青木 拓也氏(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター臨床疫学研究部)らの研究グループは、COVID-19拡大後のプライマリ・ケアに関する全国的な縦断調査を実施し、かかりつけ医機能はコロナ禍での入院リスク低下と関連することを明らかにした。高いかかりつけ医機能を発揮する医師を持つ患者は、かかりつけ医なしの患者と比べ、コロナ禍での入院リスクが約6割低いという結果となった。Annals of Family Medicine誌1月号からの報告。
かかりつけ医機能の高低が入院リスクを左右する
【背景】COVID-19パンデミック以前の海外研究において、質の高いプライマリ・ケアが入院リスクの低下と関連することが報告されている。そして、COVID-19パンデミックをきっかけに、「かかりつけ医」の役割に大きな注目が集まっているなかで、わが国のプライマリ・ケア機能(かかりつけ医機能)と入院リスクとの関連については、これまで国内外での検証が行われていなかった。そこで、COVID-19パンデミック下での、かかりつけ医機能と入院リスクとの関連を検証することを目的とした。
【方法】
本研究は、COVID-19パンデミック下の2021年5月〜2022年4月に実施されたプライマリ・ケアに関する全国前向きコホート研究(NUCS)のデータを用いて実施。NUCSは、代表性の高い日本人一般住民を対象とした郵送法による調査研究で、民間調査会社が保有する約7万人の一般住民集団パネルから、年齢、性別、居住地域による層化無作為抽出法を用いて、40〜75歳の対象者を選定した。
追跡期間の12ヵ月間における入院の発生を主要評価項目に設定し、かかりつけ医機能は、JPCAT(Japanese version of Primary Care Assessment Tool)短縮版を用いて、ベースライン時点で評価を行った。
統計解析では、住民をかかりつけ医あり群・なし群、かかりつけ医あり群をさらに四分位群(低機能群、低中機能群、中高機能群、高機能群)に分けて、入院リスクを比較。比較の際は、多変量解析を用いて、年齢、性別、教育歴、慢性疾患数、健康関連QOLといった住民の属性の影響を統計学的に調整した。
【結果】
追跡調査を完了した1,161例を解析対象者とした(追跡率92.0%)。解析対象者のうち、723例(62.3%)がかかりつけ医を有し、追跡期間中に87例(7.5%)で入院が発生した。入院した者のうち、5例(5.7%)はCOVID-19による入院だった。
住民の属性の影響を統計学的に調整した結果、かかりつけ医あり群の中でも、かかりつけ医機能が高い(JPCAT総合得点が高い)群ほど、コロナ禍での入院リスクが低下することが明らかになった(かかりつけ医なし群と比較したかかりつけ医あり・高機能群の調整オッズ比:0.37、95%信頼区間:0.16~0.83)。高機能群における入院リスク低下は、JPCATの総合得点だけでなく、下位尺度得点(近接性、継続性、協調性、包括性、地域志向性)を用いた解析でも、すべてにおいて認められた。
〔「かかりつけ医なし」を1とした場合の入院リスク〕
かかりつけ医なし:1
かかりつけ医あり/低機能:0.64
かかりつけ医あり/低中機能:0.46*
かかりつけ医あり/中高機能:0.45*
かかりつけ医あり/高機能:0.37*
(入院リスクは調整オッズ比の値/*は統計学的に有意な低下があったことを示す)
同研究グループでは、「研究成果をもとに、入院以外のさまざまなアウトカムについても検討することによって、COVID-19パンデミック後における、かかりつけ医機能やプライマリ・ケアの価値に関するエビデンスを今後もさらに構築していく」と展望を語っている。
(ケアネット 稲川 進)
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