高齢者の認知機能に対する睡眠薬の影響は論争の的となっている。これは、睡眠の質や人種差に依拠している可能性がある。米国・カリフォルニア大学のYue Leng氏らは、睡眠薬使用と認知症発症について15年間の縦断的関連を評価し、夜間の睡眠障害との関連や人種差について調査を行った。その結果、睡眠薬の高頻度の使用が、白人高齢者の認知症リスクと関連していることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2022年12月20日号の報告。
対象は、認知症でない地域住民の高齢者3,068人(年齢:74.1±2.9歳、黒人の割合:41.7%、女性の割合:51.5%)。睡眠薬使用は、「睡眠薬や睡眠補助薬を服用していますか?」との質問を3回行って記録し、5段階(まったくない[0回]、ほとんどない[1回/月]、ときどき[2~4回/月]、よくある[5~15回/月]、非常によくある[16~30回/月])で評価した。認知症の発症は、入院記録、認知症薬の使用または全体的な認知機能の臨床的に有意な低下で定義した。
主な結果は以下のとおり。
・睡眠薬の使用頻度が「よくある」または「非常によくある」と回答した高齢者は、白人で7.71%(138人)、黒人で2.66%(34人)であった。
・白人では、すべての処方される睡眠薬の使用率がほぼ2倍であった。
・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、617人であった。
・すべての共変量で調整した後、睡眠薬を5回/月以上使用していた高齢者は、1回/月以下の高齢者と比較し、認知症を発症する可能性が有意に高かったが、この関連性は白人のみで認められた([白人]HR:1.79、1.21~2.66、[黒人]HR:0.84、0.38~1.83、p for interaction=0.048)。
・夜間の睡眠でさらに調整した後でも、結果に大きな変化は認められなかった。
・この関連性は、睡眠薬の累積使用頻度と類似しており、3年間の睡眠薬未使用期間後でも維持されていた。
(鷹野 敦夫)