米国では、2021年に24万8,530例の男性が前立腺がんと診断され、3万4,000例以上が死亡したと推定されている。一方、前立腺がんは進行が遅く、70 歳以上の場合、スクリーニングは寿命を延ばすことなく、過剰診断や過剰診療の不必要なリスクをもたらす可能性があるとして、米国ガイドラインにおいて推奨されていない。
それにもかかわらず行われる「価値の低い」スクリーニングは主にプライマリケア・クリニック(家庭医)で行われており、医師の指示/依頼が多いほど低価値のスクリーニングが行われる傾向にあることが、米国・ノースカロライナ州のウェイクフォレスト医科大学の Chris Gillette氏らによる研究で示された。本結果は、Journal of the American Board of Family Medicine誌オンライン版2023年1月2日号に掲載された。
研究者らは 2013~16年および2018年のNational Ambulatory Medicare Care Surveyのデータセットの二次分析を行った。Andersenの医療サービス利用の行動モデルにより、独立変数の選択を行い、多変量解析を行った。データから、(1) 患者が男性、(2) 70歳以上、(3) プライマリケア・クリニック受診を選択し、さらに診断検査である可能性がある特定のコードを除外し、スクリーニング検査を抽出した。
主な結果は以下のとおり。
・70歳以上への「価値が低い」と判断された血清PSA(前立腺特異抗原)スクリーニングは100回中6.71回(95%信頼区間[CI]: 5.19~8.23)、直腸指診は100回中1.65回(95% CI: 0.91~2.38)の割合で行われていた。
・低価値のスクリーニングは、プライマリ医や医療機関によって提供/指示されたサービスの数に関連していることが判明した。具体的には、1つのサービスを依頼するごとに、低価値のPSAが実施される確率が49%、低価値の直腸指診が実施される確率が37%増加した。
・過去の受診した回数の多い受診では、低価値の直腸指診を受ける確率は減少した。
研究者らは「医療者が診察時に可能な検査をすべて指示してしまう『ショットガン』アプローチはよく知られた現象であり、医療資源の浪費を引き起こし、ひどい場合は患者がその後有害な検査や処置にさらされる可能性がある。前立腺がんスクリーニングは患者の嗜好性が高く、リスクがあるにもかかわらず検査を希望している可能性がある。低価値のスクリーニングを減らしたい組織は、多くの検査をオーダーしているクリニックに介入(監査やフィードバック)すべきである。また、本研究はプライマリケア・クリニックにおけるスクリーニングの調査であり、泌尿器科専門医のものは含まれていないことに注意が必要だ」としている。
(ケアネット 杉崎 真名)