高齢者の歩行速度と認知症リスク~久山町研究

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/02/06

 

 九州大学の多治見 昂洋氏らは、高齢者の歩行速度と脳体積および認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、最高歩行速度が低下すると認知症リスクが上昇しており、この関連には海馬、島皮質の灰白質体積(GMV)減少および白質病変体積(WMHV)増加が関連している可能性が示唆された。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2023年3月号の報告。

 MRIを実施した65歳以上の認知症でない日本人高齢者1,112人を対象に、5.0年間(中央値)フォローアップを行った。対象者を、年齢および性別ごとに最高歩行速度の四分位により分類した。GMVおよびWMHVの測定には、voxel-based morphometry(VBM)法を用いた。最高歩行速度とGMVとの横断的な関連を評価するため、共分散分析を用いた。最高歩行速度と認知症発症リスクとの関連を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。最高歩行速度と認知症との関連に対する脳体積の影響を検討するため、媒介分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・最高歩行速度の低下は、ベースラインでの脳全体、前頭葉、側頭葉、帯状回、島皮質、海馬、扁桃体、大脳基底核、視床、小脳のGMV低下およびWMHV増加と有意な関連が認められた。
・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は108人であった。
・潜在的な交絡因子で調整した後、すべての原因による認知症発症率は、最高歩行速度の低下に伴い有意な増加が観察された(P for trend=0.03)。
・海馬、島皮質のGMVおよびWMHVの媒介効果に有意差が認められた。

(鷹野 敦夫)