行政・学校・病院が連携して行う疾患啓発~糸魚川ジオパーク頭痛啓発キャンペーン

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/23

 

 頭痛は、一般的な公衆衛生上の問題である。その負荷を軽減するためには、頭痛に関する意識を高め、急性症状の管理や予防可能な薬剤を適切に使用することが求められる。しかし、一般の人々における頭痛に関する意識向上の研究は、これまでほとんど行われていなかった。新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、2021年8月~2022年6月に、2つの介入による「糸魚川ジオパーク頭痛啓発キャンペーン」をプロスペクティブに実施し、有効性の評価を行った。著者らは、本キャンペーンの実施により一般の人々の頭痛に関する認知率が向上したとし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でほぼすべての住民が集まるワクチン集団接種会場や、学校を基盤とした対面のないオンデマンドe-ラーニングでの疾患啓発活動は、きわめて効果的な方法であると報告している。Headache誌オンライン版2023年1月27日号の報告。

 15~64歳の一般の人々を対象に、次の2つの介入を実施した。介入1では、COVID-19ワクチン接種会場で頭痛に関するリーフレットの配布および紙面アンケートを実施。介入2では、学校を通じたオンデマンドe-ラーニングおよびオンライン調査を実施した。これらの介入は、『頭痛の診療ガイドライン2021』に記載されている、一般の人々にとって重要な6つのトピックで構成した。2つの介入のそれぞれの回答は実施の前と後に収集し、キャンペーン前後の6つのトピックの認知度を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・糸魚川市の生産年齢人口2万458人中6,593人(32.3%)が、2つの介入のいずれかに参加した(介入1:ワクチン接種を受けた6,382人のうち有効回答が得られた4,016人、介入2:高校生1,085人のうち594人と保護者3,699人のうち1,983人を含む2,577人)。

・6つのトピックは以下のとおりであった。
 Topic1:頭痛による経済損失は大きい
 Topic2:アブセンティズム(頭痛による欠勤・欠席)よりプレゼンティズム(頭痛によるパフォーマンス低下)のほうが損失は大きい
 Topic3:頭痛の治療は可能かつ必要
 Topic4:月に2回以上の片頭痛があれば受診する
 Topic5:頭痛の治療は急性期治療薬と予防治療の2本立てである
 Topic6:薬剤の使用過多による頭痛がある

・6つのトピックの認知率は、介入前は6.6(39/594)~40.0%(1,606/4,016)の範囲であったのに対し、介入後は64.1(381/594)~92.6%(1,836/1,983)の範囲へ有意な増加が認められた(すべて、p<0.001)。
【介入1(対象:ワクチン接種会場4,016人)】
 Topic1:介入前:27%→介入後:70%
 Topic2:介入前:25%→介入後:72%
 Topic3:介入前:40%→介入後:84%
 Topic4:介入前:33%→介入後:80%
 Topic5:介入前:27%→介入後:75%
 Topic6:介入前:27%→介入後:72%
【介入2(対象:高校生594人)】
 Topic1:介入前: 7%→介入後:64%
 Topic2:介入前:11%→介入後:69%
 Topic3:介入前:28%→介入後:79%
 Topic4:介入前:23%→介入後:76%
 Topic5:介入前:24%→介入後:76%
 Topic6:介入前:19%→介入後:75%
【介入2(対象:保護者1,983人)】
 Topic1:介入前: 7%→介入後:80%
 Topic2:介入前: 8%→介入後:84%
 Topic3:介入前:35%→介入後:90%
 Topic4:介入前:32%→介入後:92%
 Topic5:介入前:24%→介入後:93%
 Topic6:介入前:34%→介入後:92%

(鷹野 敦夫)