うつ病に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の臨床反応の発現には、数週間を要することも少なくない。また、そのメカニズムは十分に把握されているとはいえない。オランダ・ユトレヒト大学のLynn Boschloo氏らは、うつ病の臨床症状に対するSSRIの直接的および間接的な効果について、プラセボ対照の状態と比較し評価を行った。その結果、SSRIは主に感情症状の改善を介して、間接的に認知症状やいくつかの覚醒/身体症状を改善することが明らかとなった。著者らは、本結果はSSRIの作用機序の解明や、臨床でのSSRIに対するレスポンダーおよび非レスポンダーの早期特定に役立つ可能性があると述べている。Translational Psychiatry誌2023年1月21日号の報告。
米国食品医薬品局(FDA)に登録されたSSRIの有効性に関する28件の試験に参加したうつ病成人患者8,262例のデータを分析した。うつ病の臨床症状は、治療後1、2、3、4、6週目に、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HDRS-17)を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・Network estimation techniqueでは、SSRIは抑うつ気分および精神的不安といった2つの感情症状に対し、迅速かつ強力な直接的効果を示していた。なお、他の症状への直接的効果は弱い、または認められなかった。
・4つの認知症状(罪責感、自殺念慮、仕事/活動での興味の喪失、集中困難を含む遅滞)のすべてに対しては実質的な間接的効果が認められており、SSRIによる大幅な改善が示されたが、主に抑うつ気分の大幅な改善が報告された患者においてであった。
・精神的不安への直接的な影響を介して、身体的不安および焦燥といった2つの覚醒/身体症状に小さな間接的効果が認められた。
・睡眠障害やその他の覚醒/身体症状に対する直接的および間接的な効果は弱い、または認められなかった。
(鷹野 敦夫)