国立成育医療研究センターの大矢 幸弘氏らの研究グループは、2023年4月10日のプレスリリースで、食物アレルギーの発症リスクが高い、乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎の乳児に対する早期の積極的治療が食物アレルギーの発症を予防することを世界で初めて実証したと発表した。
大矢氏らは、食物アレルギー予防のためにアトピー性皮膚炎の乳児に対して早期に治療を行う臨床研究「アトピー性皮膚炎への早期介入による食物アレルギー発症予防研究/多施設共同評価者盲検ランダム化介入平行群間比較試験:PACI(パッチー)Study(スタディ)」を実施し、研究対象となるアトピー性皮膚炎の生後7週~13週の乳児を、標準的な治療を行う群と、ステロイド外用薬などを使った積極的な治療を行う群に分け、生後28週時点で鶏卵アレルギーがあるかどうかを調べた。その結果、積極的な治療を行った群は標準的な治療の群と比較し、鶏卵アレルギーの発症を25%削減できることがわかった。これは、皮膚への早期の治療介入が食物アレルギーの予防につながるという二重抗原曝露仮説を実証する世界で初めての研究成果である。
今回の研究により、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症早期からの速やかな治療開始と、湿疹ゼロを目標とした治療強化により、食物アレルギーの発症を予防できること、アトピー性皮膚炎は食物アレルギーとの関連性が高く、食物アレルギー予防のためには乳児期の発症早期からしっかり湿疹を治療し、経皮感作のリスクを低下させることが重要であることが明らかになった。
大矢氏らは、食物アレルギー予防のためには、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症早期からしっかり湿疹を治療し、湿疹ゼロを目標にすることが重要だと語った。ただし、実臨床では、患者さんの症状や重症度などに合わせて、適切な強さのステロイド外用薬の選択を行い、個々の患者さんごとに使用期間と減量のスケジュールを組み立てて副作用を回避し、湿疹ゼロの寛解状態を実現・維持していくことが求められる、と述べている。
(ケアネット 溝口 ありさ)