救急医は、不眠症の有病率や睡眠薬の使用頻度が高いといわれている。救急医の睡眠薬使用に関するこれまで研究では、回答率の低さから、現状を十分に把握できていなかった。国際医療福祉大学の千葉 拓世氏らは、若手日本人救急医を対象に、不眠症の有病率および睡眠薬使用状況を調査し、不眠症や睡眠薬使用に関連する因子の評価を試みた。その結果、日本における若手救急医は慢性不眠症の有病率および睡眠薬の使用率が高く、慢性不眠症には長時間労働やストレスが、睡眠薬の使用には性別、婚姻状況、ストレスが関連していることが報告された。The Western Journal of Emergency Medicine誌2023年2月20日号の報告。
2019年と2020年に初めて日本救急医学会の専門医試験を受験した救急科専門医を対象に、慢性不眠症および睡眠薬使用に関する調査を実施した。データは、匿名かつ自発的な報告により収集した。不眠症の有病率および睡眠薬使用について調査し、それらに影響を及ぼす人口統計学的および仕事関連の因子を特定するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・回答率は、89.71%(732/816人)であった。
・慢性不眠症の有病率は24.89%(95%信頼区間[CI]:21.78~28.29)、睡眠薬の使用率は23.77%(95%CI:20.69~27.15)であった。
・慢性不眠症に関連する因子は、長時間労働(オッズ比[OR]:1.02、95%CI:1.01~1.03、1週間当たり1時間)、ストレス要因(OR:1.46、95%CI:1.13~1.90)であった。
・睡眠薬使用に関連する因子は、男性(OR:1.71、95%CI:1.03~2.86)、未婚(OR:2.38、95%CI:1.39~4.10)、ストレス要因(OR:1.48、95%CI:1.13~1.94)であった。
・ストレス要因は主に、患者/家族および同僚への対応、医療過誤に関する懸念、疲労のストレッサーによる影響を受けていた。
(鷹野 敦夫)