新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後、長期にわたって症状が残存する患者が存在する。症状はさまざまであるが、その中の1つとして睡眠障害が挙げられている。そこで、中等症以上のCOVID-19患者を日本全国55施設で追跡した「COVID-19後遺障害に関する実態調査(中等症以上対象)」において、睡眠障害の実態が検討された。その結果、中等症以上のCOVID-19患者の睡眠障害が遷延していることが明らかになった。2023年4月28~30日に開催された第63回日本呼吸器学会学術講演会において、佐藤 晋氏(京都大学大学院医学研究科 呼吸管理睡眠制御学講座 特定准教授)が発表した。
本研究は日本全国55施設において、2020年9月~2021年9月に入院した「COVID-19診療の手引き」に基づく中等症以上の成人(20歳以上)COVID-19患者を対象とした。退院後3ヵ月後から最長1年間、罹患後症状が消失するまで3ヵ月ごとに臨床所見、症状、呼吸機能などの経過観察を実施した。本解析では、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)に基づく睡眠障害(6点以上を睡眠障害ありと判定)、SF-8に基づく健康関連QOLを評価した。
主な結果は以下のとおり。
・1,069例が登録され、睡眠障害は3/6/9/12ヵ月後において656/258/130/104例、QOLはそれぞれ765/305/163/115例を対象として評価された。
・12ヵ月後において罹患後症状があった患者は、罹患後症状が9ヵ月後までに消失した患者と比べて、高齢、COVID-19重症、高血圧あり、の割合が高かった。
・12ヵ月後において罹患後症状があった患者と罹患後症状が9ヵ月後までに消失した患者における、3ヵ月後に存在していた症状を比べると、12ヵ月後に罹患後症状があった患者の特徴は、睡眠障害あり、SF-8で評価した身体機能、日常役割機能(身体)、全体的健康感、身体的評価スコアが不良、であった。
・睡眠障害を有する割合は、3~12ヵ月後の各時点において43.9%(288/656例)、44.2%(114/258例)、51.5%(67/130例)、48.1%(50/104例)と罹患後症状が残存する患者における頻度が増加傾向にあった。
・3~12ヵ月のいずれの時点においても、睡眠障害のある患者は睡眠障害のない患者と比べて、QOLが有意に低く、SF-8のほとんどの項目で国民標準値を下回った。
・3ヵ月後において睡眠障害があった患者のうち、73%(25/34例)は12ヵ月後においても睡眠障害を有していた。
佐藤氏は、本研究の結果について、「中等症以上の罹患後症状のうち、睡眠障害はQOLの低下に関連し、さらに罹患後症状の長期遷延の要因である可能性がある。とくに、肥満や生活習慣病併存の頻度を考慮すると、COVID-19重症化リスクの1つである睡眠呼吸障害(ほとんどが睡眠時無呼吸症候群)の関与が示唆される。罹患後症状の残存する患者において、睡眠時無呼吸の評価を含めた検討が有益である可能性が示唆される」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)