近年、50歳未満で発症する大腸がん(早期発症大腸がん)が世界的に急増している。また、早期発症大腸がんは診断が遅れることが多く、診断時には進行していることも多い。そこで、米国・ワシントン大学セントルイス校のCassandra D. L. Fritz氏らは、ケースコントロール研究を実施し、早期発症大腸がんに関連する徴候・症状を検討した。その結果、直腸出血、鉄欠乏性貧血、下痢、腹痛を早期に発見することで、早期発症大腸がんの早期発見と適時診断につながる可能性が示された。本研究結果は、Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2023年5月4日号で報告された。
18~64歳の米国の民間保険加入者1億1,300万例のうち、2年以上継続加入している早期発症大腸がん患者5,075例を対象として、2006~15年の期間にマッチドケースコントロール研究を実施した(対照は2万2,378例)。事前に規定した17個の徴候・症状について、大腸がん診断前3ヵ月~2年の徴候・症状と早期発症大腸がんの関係を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・事前に規定した17個の徴候・症状のうち、早期発症大腸がん患者の診断前3ヵ月~2年の症状として多くみられたものは、腹痛(11.6%)、直腸出血(7.2%)であった。
・直腸出血(オッズ比[OR]:5.13、95%信頼区間[CI]:4.36~6.04)、鉄欠乏性貧血(OR:2.07、95%CI:1.61~2.66)、下痢(OR:1.43、95%CI:1.14~1.78)、腹痛(OR:1.34、95%CI:1.19~1.49)の4個が早期発症大腸がんの独立した関連因子として特定された。
・上記の4個の徴候・症状を多く有しているほど、早期発症大腸がんのリスクが高かった(1個の場合のOR:1.97、95%CI:1.80~2.15、2個の場合のOR:3.66、95%CI:2.97~4.51、3個以上の場合のOR:6.96、95%CI:4.07~11.91、p for trend<0.001)。
・上記の傾向は、若年(p for interaction<0.001)、直腸がん(p for heterogeneity=0.012)で強く認められた。
・上記の4個の徴候・症状が診断前3ヵ月~2年に発現した患者の割合は19.3%(診断間隔中央値:8.7ヵ月)、診断後3ヵ月以内に発現した患者の割合は49.3%(診断間隔中央値:0.53ヵ月)であった。
(ケアネット 佐藤 亮)