がん患者と非がん患者のCOVID-19による死亡リスクを比較した研究はあるが、そこに性差はあるのか。米国・南カリフォルニア大学・産婦人科腫瘍部門の松尾 高司氏らによる大規模コホート研究の結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2023年4月27日号に掲載された。
研究者らは48州およびコロンビア特別区の参加病院によるHealthcare Cost and Utilization ProjectのNational Inpatient Sample(米国人口の95%以上の退院データをカバー)を用い、2020年4月~12月にCOVID-19感染の診断を受けて入院した患者を、世界保健機関(WHO)の分類コードによって特定した。データ解析は2022年11月~2023年1月にかけて行い、人口特性、併存疾患、および病院パラメータで層別化したうえで性別、がん種別にCOVID-19院内症例の死亡率を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・2020年4月1日~12月31日にCOVID-19の入院患者は162万2,755例であった。全体のCOVID-19院内症例の死亡率は12.9%、死亡までの期間中央値は5日(四分位範囲[IQR]:2~11日)であった。
・162万2,755例のうち、7万6,655例(4.7%)が悪性新生物と診断された。多変量解析後、性別(男性対女性:14.5%対11.2%、調整オッズ比[aOR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.27~1.30)、悪性新生物診断(17.9%対12.7%)はともに死亡リスク上昇と関連していた。
・女性患者群で死亡リスクが2倍以上となったがん種は、肛門がん(23.8%、aOR:2.94、95%CI:1.84~4.69)、ホジキンリンパ腫(19.5%、aOR:2.79、95%CI:1.90~4.08)、非ホジキンリンパ腫(22.4%、aOR:2.23、95%CI:2.02~2.47)、肺がん(24.3%、aOR:2.21、95%CI:2.03~2.39)、卵巣がん(19.4%、aOR:2.15、95% CI:1.79~2.59)の5つだった。これらに続き、膵がん、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、肝がんの4つで死亡リスクが1.5倍以上となった。
・男性患者群で死亡リスクが2倍以上となったがん種は、カポジ肉腫(33.3%、aOR:2.08、95%CI:1.18~3.66)と小腸の悪性新生物(28.6%、aOR:2.04、95%CI:1.18~3.53)の2つだった。これらに続き、大腸がん、肺がん、食道がん、骨髄性白血病、膵がんの5つで死亡リスクが1.5倍以上となった。
著者らは「本コホート研究の結果、米国における2020年のパンデミック初期において、COVID-19院内症例の死亡率が高かったことが確認された。死亡リスクは女性よりも男性のほうが高かったが、がん併発による死亡リスクとの関連は女性のほうが強く、併発によって死亡リスクが2倍以上になるがん種が多かった」としている。
(ケアネット 杉崎 真名)