治療抵抗性うつ病に対するベンゾジアゼピン長期使用~FACE-TRDコホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/06

 

 ベンゾジアゼピン(BZD)の長期使用は、公衆衛生上の問題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病(TRD)に対するBZD長期使用の影響に関するデータは、十分とはいえない。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、選択していないTRD患者におけるBZD長期使用および1年間でBZD中止に成功した患者の割合を調査し、継続的なBZD長期使用がメンタルヘルスのアウトカムに及ぼす影響を評価した。その結果、TRD患者の約半数は、BZDが過剰に使用されており、BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間の中止率は5%未満であることを報告した。著者らは、TRD患者に対するBZD長期使用は、臨床症状、認知機能、日常生活に悪影響を及ぼす可能性があり、計画的なBZD中止が強く推奨されると考えられることから、薬理学的および非薬理学な代替介入を促進する必要があるとしている。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2023年8月30日号の報告。

 2014~21年にTRDの専門医療機関13施設より募集されたTRD患者を対象に、1年間のフォローアップを行ったFACE-TRDコホート研究を実施した。トレーニングされた医師および患者からの報告を含む標準化された包括的バッテリーが実施され、1年後に患者の再評価を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時、BZD長期使用群に分類された患者は、45.2%であった。
・多変量解析では、BZD長期使用群は、非BZD長期使用群と比較し、年齢、性別、抗精神病薬の投与量とは無関係に、身体活動の低さ(調整オッズ比[aOR]:1.885、p=0.036)、プライマリケアの利用率の高さ(B=0.158、p=0.031)と関連が認められた。
・性格特性、自殺念慮、衝動性、幼少期のトラウマへの暴露、初発大うつ病エピソード年齢の低さ、不安、睡眠障害については、有意な差は認められなかった(それぞれp>0.05)。
・BZD中止を推奨しているにもかかわらず、1年間のフォローアップ期間中にBZDを中止した患者は5%未満であった。
・1年後の継続的なBZD長期使用と関連していた因子は、以下のとおりであった。
 ●うつ病重症度の高さ(B=0.189、p=0.029)
 ●臨床全般重症度の高さ(B=0.210、p=0.016)
 ●不安状態の高さ(B=0.266、p=0.003)
 ●睡眠の質の低下(B=0.249、p=0.008)
 ●末梢炎症性の増加(B=0.241、p=0.027)
 ●機能レベルの低下(B=-0.240、p=0.006)
 ●処理速度の低下(B=-0.195、p=0.020)
 ●言語エピソード記憶の低下(B=-0.178、p=0.048)
 ●欠勤および生産性の低下(B=0.595、p=0.016)
 ●主観的な健康状態の低さ(B=-0.198、p=0.028)

(鷹野 敦夫)