数ラインの治療歴のあるHER2陽性の転移のある胆道がんに対し、チロシンキナーゼ阻害薬のtucatinibとトラスツズマブの併用療法が有効であるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において国立がん研究センター東病院の中村 能章氏よりなされた。
これは、泌尿器がんなどのHER2陽性固形がんを含む9つのコホートからなるオープンラベル第II相バスケット試験であるSGNTUC-019試験の中の、胆道がんコホートの結果である。
・対象:1ライン以上の化学療法治療歴のある進行または転移を有するHER2陽性胆道がん症例
(HER2陽性:HER2高発現[IHC 3+]またはHER2遺伝子増幅あり[FISH/NGS]と定義)
・介入:tucatinib 300mg×2/日+トラスツズマブ6mg/kg(初回8mg/kg)3週ごと
・評価項目:
[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)
[副次評価項目]安全性、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)
主な結果は以下のとおり。
・2021年6月~2022年5月に30例が胆道がんコホートに登録され、追跡期間中央値は10.8ヵ月であった。
・患者の年齢中央値は68.5歳、アジア人が76.7%、胆嚢がんが50%、StageIVが60.0%、前治療のライン数中央値は2であった。
・ORRは46.7%で、CRは1例(3.3%)、PRは13例(43.3%)であった。DCRは76.7%で、DOR中央値は6.0ヵ月であった。
・腫瘍縮小効果発現までの中央値は2.1ヵ月であった。
・PFS中央値は5.5ヵ月で、6ヵ月PFS率は49.8%、12ヵ月PFS率は16.1%であった。
・OS中央値は15.5ヵ月で、6ヵ月OS率は73.0%、12ヵ月OS率は53.6%であった。
・治療関連有害事象は全例に認められ、主なものは発熱43.3%、下痢40.0%、インフュージョンリアクション26.7%、血中クレアチニン増加26.7%、ALT上昇26.7%などであった。Grade3以上の有害事象は、悪心10%、胆管炎10%、食欲不振10%などであり、治療関連死はなかった。
・HER2検査の中央判定と施設判定での陽性一致率は、IHC、FISH共に87.5%であり、血液検体を用いたNGSでは75.9%であった。中央判定でHER2陰性と判定された症例に、奏効例はなかった。
(ケアネット)