さまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、抗精神病薬が認知症患者に対し、依然として一般的に処方されている。北里大学の斉藤 善貴氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬の処方状況および併用薬の種類を明らかにするため、本検討を行った。その結果、認知症患者への抗精神病薬の処方と関連していた因子は、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用であった。著者らは、抗精神病薬の処方の最適化には、正確な診断のための地域の医療機関と専門医療機関の連携強化、併用薬の効果の評価、処方カスケードの解決が必要であるとしている。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2023年5月26日号の報告。
対象は、2013年4月~2021年3月に受診した認知症外来患者1,512例。初回外来受診時に、人口統計学的データ、認知症のサブタイプ、定期処方薬の調査を行った。抗精神病薬の処方と、紹介元、認知症のサブタイプ、抗認知症薬の使用、多剤併用、潜在的に不適切な薬物(PIM)の使用との関連性を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・抗精神病薬が処方されていた認知症患者は11.5%であった。
・認知症のサブタイプで比較すると、レビー小体型認知症患者は、他のすべての認知症サブタイプの患者よりも、抗精神病薬の処方率が有意に高かった。
・併用薬については、抗認知症薬使用、多剤併用、PIM使用の患者において、これらの薬物を使用していない患者と比較し、抗精神病薬処方の可能性が高かった。
・多変量ロジスティック回帰分析では、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用が、抗精神病薬の処方と関連していることが示された。
(鷹野 敦夫)