膀胱がん膀胱全摘除術に際する拡大リンパ節郭清、生存への寄与はなし(SWOG S1011)/ASCO2023

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/12

 

 筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱全摘除術(RC)に際し、リンパ節郭清の範囲と予後の関連をみた試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・Baylor College of MedicineのSeth P. Lerner氏から発表された。

 北米で行われた手術に関する第III相無作為化試験SWOG S1011の結果である。本試験では手術手技の均てん化を図るため、参加施設を限定し、27施設36人の医師が参加した。さらに、手術手技の質を担保するため、各群50例ずつの術中写真や病理レポートを、外部専門医(SWOG Surgery Committee)がレビューした。

・対象: T2~T4aと診断され、RCを受けた筋層浸潤性膀胱がん症例(リンパ節転移の有無は問わず、術前薬物療法は許容)
・対照群:標準的リンパ節郭清を施行(両側の閉鎖・外腸骨・内腸骨リンパ節の郭清:SLND群300例)
・試験群:拡大リンパ節郭清を施行(上記に加え、両側の深部閉鎖溝・総腸骨リンパ節、傍下大静脈リンパ節、大動静脈間リンパ節、傍大動脈リンパ節を郭清:ELND群292例)
・評価項目:
[主要評価項目]無病生存期間(DFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、術後90日の死亡率、安全性、手術時間など

 主な結果は以下のとおり。

・両群ともにT2症例が71%を占め、術前薬物療法は57%の症例に施行されていた。
・郭清されたリンパ節数中央値は、ELND群が39個、SLND群が24個であり、そのうち転移陽性のリンパ節数中央値はそれぞれ2個と1個であった。
・手術中の出血量は両群間で差はなかった。
・DFSのハザード比(HR)は、1.10(95%信頼区間[CI]:0.87~1.42、p=0.40)であった。5年DFS率はELND群55%、SLND群58%であった。
・OSのHRは、1.15(95%CI:0.89~1.48、p=0.29)であり、5年OS率はELND群59%、SLND群63%であった。
・Grade3以上の有害事象は全体的にELND群で多く、術後90日の死亡率はELND群6.5%、SLND群2.4%であった。

 Lerner氏は「膀胱全摘出手術における拡大リンパ節郭清は、生存予後の改善には寄与しなかった」と結んだ。

(ケアネット)

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