患者からの「心付け」、角が立たない断り方は?/医師1,000人アンケート

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/10

 

 患者さんがお世話になった医師に診療対価のほかに金銭や物品などを渡すという慣習に対して、受け取りたくない/受け取ることができない医師が断り方に苦慮するという話を聞く。そこで、CareNet.comでは、患者さんやそのご家族からの感謝の気持ちとして、診療対価のほかに「お礼(心付け)」を受け取った経験や、申し出を断る言葉や方法に関するアンケートを実施した。その結果、内科系・外科系診療科を問わず80%超の医師がお礼を受け取った経験があるが、もはや過去の慣習と考えている医師が多く、さらに、何とかして渡したい患者vs.受け取りたくない医師のやり取りも明らかになった(2023年6月22日実施)。

お礼を受け取ったことがある医師は84.2%

 Q1では、これまで診療の対価のほかに、患者さんやそのご家族から金銭・物品を問わずお礼(心付け)を受け取ったことがあるかどうかを聞いた。その結果、受け取ったことがある医師は全体で84.2%であった。手術を伴う外科系診療科のほうが多いかと思ったが、内科系83.2%、外科系86.4%で大きな差はみられなかった。年齢別では、受け取ったことがある20代は66.7%、30代は77.8%、40代は82.0%、50代は87.4%、60代は91.8%、70代以上は89.7%と、おおむね年代が上がるにつれ割合が増加した。

最も多いのはお菓子などの飲食物

 Q2では、上記Q1でお礼を受け取ったことがある場合に、何を受け取ったかを聞いた(複数回答)。最も多かったのはお菓子などの飲食物で、順に現金、商品券などの金券、手紙、似顔絵や小物などの手作りの品、お花と続いた。
 自由記入の「その他」ではなぜか靴下が多数寄せられていた。

現金は1万円くらいが半数、16万円以上も

 Q3では、お礼を現金または金券を受け取ったことがある場合、患者さん1人当たりの平均金額について聞いた。「1万円くらい」が49.9%と半数を占め、「2万円くらい」が8%。「3万円くらい」が11.7%、「5万円以上」が1.9%であった。「6万円以上」は0.7%であったが、16万円以上を受け取っていたという回答もあった。

渡したい患者vs.受け取りたくない医師

 Q4ではフリーコメントとして、お礼に対する考え、患者さんがお礼を申し出た際に断る言葉・方法を聞いたところ、何とかして渡したい患者と受け取りたくない医師のやり取りが興味深かった。「結構ですと断るが、無理やり白衣のポケットに突っ込まれた」「後日郵送される」など強硬手段に出る患者もいて、「断ると角が立つこともあり悩ましい」「断るとご立腹される方もいて難しい」「古い患者さんは断るのが難しい」「お礼を頂かないのは失礼になるのではないかと不安になる」など苦労する医師の声が寄せられた。また、やはり断れないのか、いったん受け取った後、「現金、金券は私からの快気祝いですと言って返す」「退院祝いとしてそのまま返す」などもあった。

受け取る、受け取ることがある派のご意見
・素直に受け取ります。
・常識範囲内での礼節であれば問題ないと考える。
・断り続けるのも、ある意味失礼。
・お礼は気持ちの問題ですので、無理に断る必要はないと思っています。ただし、患者のキャラクターで後々問題になりそうな人であれば、丁重に断ったほうがよいと思います。
・良くない習慣ではあると思うが、感謝の気持ちを示す1つの方法だとは思う。
・最近では少なくなりましたが高齢の患者さんが感謝の気持ちで用意されているので持ち帰らせるのも心苦しく積極的に頂いています。
・成功報酬としてなら頂く。

受け取らない派のご意見
・受け取ると気を遣ってしまいそうで、受け取っていない。
・平成初期のころはまだ普通にお礼を頂いていましたが、最近は頂くこと自体ほとんどありませんが、申し出があったとしても丁重にお断りしています。
・最近は生活に困ってる方が多くなった気がするので、基本お断りしています。
・お礼をもらうことで患者の診療に差がつくと思われたくないので極力もらわないようにしている。
・受け取ったのはずっと以前です。最近はお礼は古い風習ですのでやめましょうと言って断ります。
・お礼がなくとも誠心誠意診療することを伝えてお断りしています。
・昔はよくありましたが、最近はお礼がないので気が楽です。

申し出を断る言葉
・「お気持ちだけで。一番頑張ったのは患者さんご自身ですよ」
・「診療はお礼にかかわらず最善を尽くします」
・「そのお気持ちだけで私は医師として最高に幸せです」
・「礼など結構です。当然のことをしたまでです」
・「お気持ちだけで十分です。現金は教室の寄付でお願いします」
・「診療に対する報酬は病院から受け取っていますので、今後の治療のために取っておいてください」
・「十分に給与をいただいています」

アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。
患者からの「心付け」は受け取る?断る?/医師1,000人アンケート

(ケアネット 森 幸子)