抗がん剤による消化器症状を緩和するためにプロトンポンプ阻害薬(PPI)が使用されているが、PPIの酸分泌抑制作用は経口抗がん剤のバイオアベイラビリティや臨床効果に悪影響を及ぼす。今回、韓国・Sungkyunkwan UniversityのJu-Eun Lee氏らによる進行乳がん患者を対象としたコホート研究の結果、パルボシクリブにPPIを併用した群では非併用群よりも無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が短いことが示された。この結果から、パルボシクリブにPPIを併用するとパルボシクリブの治療効果が損なわれる可能性が示唆された。JAMA Network Open誌2023年7月21日号に掲載。
本研究は、韓国の2016年11月1日~2021年7月31日の全国請求データを用いた後ろ向きコホート研究で、2017年11月1日~2020年7月31日にパルボシクリブを投与された乳がん女性を調べた。パルボシクリブとPPIの処方が33%以上重複した患者をPPI併用群、パルボシクリブ治療期間中に一度もPPIを投与されなかった患者を非併用群とし、1:3の傾向スコアマッチングにより患者を選択した。主要評価項目は臨床的PFSとOSで、Cox比例ハザード回帰を用いてPPI併用のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・マッチングされた1,310例(PPI併用群:344例、非併用群:966例)のうち、1,108例(84.6%)が50歳以上で、1,111例(84.8%)がレトロゾールとアナストロゾールによる治療(ホルモン感受性)、199例(15.2%)がフルベストラントによる治療(ホルモン抵抗性)を受けていた。
・臨床的PFS中央値は、PPI併用群(25.3ヵ月、95%CI:19.6~33.0)が非併用群(39.8ヵ月、95%CI:34.9~NA)より短く(p<0.001)、HRは1.76(95%CI:1.46~2.13)であった。
・OSについてもPPI併用群のほうが短かった(HR:2.71、95%CI:2.07~3.53)。
・ホルモン感受性および抵抗性治療を受けている患者のどちらにおいても、PPI併用群の臨床的PFSおよびOSは不良であった。
(ケアネット 金沢 浩子)