乳がん1次治療でのパルボシクリブ、PPI併用でPFSが悪化/ESMO2021

提供元:ケアネット

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公開日:2021/10/06

 

 パルボシクリブで治療された転移を有する乳がん(mBC)患者の後ろ向き観察研究により、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用していた患者で無増悪生存期間(PFS)が有意に減少していたことがわかった。イタリア・Azienda Ospedaliera Universitaria Santa ChiaraのMarzia Del Re氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。

 薬剤による上部消化管障害を軽減するため、がん患者ではPPIが広く使用されているが、薬物相互作用により抗がん剤の吸収が阻害され臨床アウトカムに影響を与える恐れがある。パルボシクリブはpH依存性の溶解性を持つ弱塩基の薬剤である。この観察研究では、1次治療でパルボシクリブを投与されたホルモン受容体陽性HER2陰性のmBC患者を後ろ向きに調査した。パルボシクリブ投与中にPPIが投与されていなかった場合は併用なし、パルボシクリブ治療期間の全体または3分の2以上でPPIが投与されていた場合は併用ありと定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・合計112例が登録され、PPIの併用なしと併用ありの患者がそれぞれ56例だった。
・内分泌療法感受性の71例ではパルボシクリブ+レトロゾールが、内分泌療法抵抗性の41例ではパルボシクリブ+フルベストラントが投与されていた。
・投与されていたPPIは、ランソプラゾール(42例)、オメプラゾール(11例)、pantoprazole(2例)、エソメプラゾール(1例)だった。
・PPIを併用していた患者は、併用なしの患者と比べてPFSが短かった(14ヵ月vs.38ヵ月、p<0.0001)。
・多変量解析では、PPI併用がPFS短縮の唯一の独立した予測因子であることが確認された(p=0.0002)。
・PFSは、PPI併用なしの内分泌療法感受性mBC患者において、PPI併用患者やPPI併用有無にかかわらず内分泌療法抵抗性の患者と比べて、有意に長かった(p<0.0001)。

 この結果から、研究者らは「パルボシクリブ投与患者には注意してPPIを処方するか、H2受容体拮抗薬やPPIの投与期間を大幅に短くすることが推奨される」とした。

(ケアネット 金沢 浩子)