乾癬や湿疹を有する患者と医師の間で、重症度の認識の違いとその要因を調べた結果、認識の不一致は46.3%に認められた。医師は視覚的な客観的尺度を重視したのに対し、患者は疾患の身体的、機能的、感情的な影響を重視したことが要因として示された。また、これらが患者のレジリエンス(回復力)、自己効力感、否定的な社会的比較と関連していること、医師は重症疾患に遭遇する頻度が高いため、軽症例を過小評価してしまう可能性も示唆された。シンガポール・National University Healthcare SystemのValencia Long氏らが患者と医師1,053組を対象とした横断研究を実施し、以上の結果が示された。著者は、「本研究により明らかになった患者と医師の認識の不一致の要因が、認識の不一致を小さくするための認知行動的介入の潜在的なターゲットになる」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年7月12日号掲載の報告。
患者の重症度に関して、患者と医師で認識の不一致がみられることがある。この現象は、重症度評価の不一致(discordant severity grading:DSG)と称され、患者と医師の関係性を妨げ、フラストレーションの原因にもなる。
研究グループは、DSGに関連する認識、行動、疾患的要因を明らかにするため、定性的研究で理論モデルを導き出した。その後、構造方程式モデリング(structural equation modeling:SEM)を用いた定量的研究にて同モデルを検証した。対象患者と医師の収集は、便宜的標本抽出法を用いて2021年10月~2022年9月の期間に行った。3ヵ月以上にわたり乾癬または湿疹を有する18~99歳の患者を抽出した。データ解析は2022年10月~2023年5月に行った。
アウトカムは、患者と医師それぞれが評価した全般的重症度(NRS[numerical rating scale]:0~10、高スコアほど重症度が高い)の差で、医師の認識より患者の認識が2ポイント以上高い場合は「正の不一致」、2ポイント以上低い場合は「負の不一致」と定義した。また、SEMを用いて要因解析を行い、事前に特定した患者、医師および疾患因子と重症度の差との関連性を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象患者は1,053例(平均年齢43.5歳[標準偏差17.5]、男性579例[55.0%])。湿疹が802例(76.2%)、乾癬が251例(23.8%)であった。
・解析に含まれた医師は44例(男性20例[45.5%]、31~40歳が24例[54.5%]、シニアレジデントもしくはフェローが20例、コンサルタントまたは主治医が14例)で、医師1人当たりの患者数中央値は5例(四分位範囲:2~18)であった。
・患者と医師のペア1,053組のうち、487組(46.3%)で不一致が認められた(正の不一致447組[42.4%]、負の不一致40組[3.8%])。
・患者と医師の評価の一致は不良であった(級内相関係数[ICC]:0.27)。
・SEMを用いた要因解析により、正の不一致は、症状発現の大きさ(標準偏回帰係数β=0.12、p=0.02)、QOL低下の大きさ(β=0.31、p<0.001)と関連していた。患者や医師の人口統計学的背景との関連は認められなかった。
・QOL低下が大きいほど、回復力およびスタビリティ(安定性)の低下(β=-0.23、p<0.001)、否定的な社会的比較の増大(β=0.45、p<0.001)、自己効力感の低下(β=-0.11、p=0.02)、疾患の周期性の増大(β=0.47、p<0.001)、慢性化の見込みの増大(β=0.18、p<0.001)との関連が認められた。
・モデルの適合度は良好であった(Tucker-Lewis:0.94、Root Mean Square Error of Approximation[RMSEA]:0.034)。
(ケアネット)