厚生労働省は8月21日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知した。2023年2月に公開された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第9.0版」以来、5類移行後初めての改訂となる本版は、オミクロン株に置き換わって以降の国内外の知見が反映され、よりコンパクトな内容になっている。とくに外来診療にも役立てられるよう、COVID-19診療の手引きの第4章では、前版までは重症度別に記載されていたマネジメントが、「外来診療」「入院診療」「集中治療」別にまとめなおされ、「外来診療」の項目には、成人の外来診療における抗ウイルス薬の選択フロー図が示された。また、COVID-19診療の手引きを基に「COVID-19 外来診療の基礎知識」の表も公開された。
COVID-19診療の手引きに抗ウイルス薬の選択フロー図を追加
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」の主な改訂点は以下のとおり。太字は5類移行に関連する改訂点。
【1 病原体・発生状況】
・病原体/発生状況を更新
【2 臨床像】
・臨床像に第9.0版の胸部画像所見、合併症の内容を追加し、更新
・重症化リスク因子/小児例の特徴/妊婦例の特徴を更新
・COVID-19ワクチンに関する説明を追加
【3 診断・サーベイランス】
・症例定義に関する記載を削除
・検体と採取法を説明する表を追加
・
届出に関する記載を参考として更新
[参考]定点医療機関における届出基準
2023年5月8日より、COVID-19は、流行の状況や症状等を鑑み、感染症法上の位置づけを見直し、5類感染症に位置づけ、インフルエンザと同様、診療科名に内科・小児科を含む指定届出機関による届出対象疾病に追加された。したがってCOVID-19指定届出機関の管理者が届出基準を満たした患者を診断した場合に届出を行うこととなった。
【4 重症度分類とマネジメント】
・序文、重症度分類/高齢者の管理/小児の管理/妊産婦の管理を更新
・重症度別に記載していたマネジメントを「外来診療」「入院診療」「集中治療」にまとめなおし、内容を更新
・
G-MISを活用した入院調整に関する説明を参考として追加
【5 薬物療法】
・抗ウイルス薬/中和抗体薬/免疫抑制・調節薬/妊婦に対する薬物療法を更新
・オミクロン流行期以降に実施された臨床研究の表、抗ウイルス薬の選択フロー図を追加
・日本国内で開発中の主な薬剤を削除し、国内外で開発が中止された主な薬剤を更新
【6 院内感染対策】
・序文/職員の健康管理、個人防護具/妊婦および新生児への対応/死後のケアを更新
・病理解剖業務における感染対策/
医療従事者の就業制限を追加
[参考]医療従事者の就業制限
5類移行後は感染症法に基づく就業規制は行われないが、国は医療機関や高齢者福祉施設等に対して、COVID-19に罹患した従事者の就業制限を考慮するよう呼びかけている。位置づけ変更後の新型コロナ患者の療養の考え方(発症日を0日目として5日間、かつ解熱および症状軽快から24時間経過するまでは外出を控えることが推奨される)等を参考に、罹患した者の体調や業務内容、地域の流行状況、事業継続性等を総合的に判断して、施設ごとに対応することが求められている。
・
退院基準、解除基準(第9.0版)の内容を感染予防策を実施する期間として更新
[参考]感染予防策を実施する期間
医療施設内で感染予防策を実施する期間(隔離期間)の基準は示されていないが、新型インフルエンザ等感染症に指定されていた際の退院基準を参考にするなど、医療機関ごとに対応が求められる。
(ケアネット 古賀 公子)