サノフィは2023年9月25日付のプレスリリースで、高い血液凝固第VIII因子活性を長く維持するファースト・イン・クラスの高活性維持型血液凝固第VIII因子製剤オルツビーオ(一般名:エフアネソクトコグ アルファ[遺伝子組換え])の製造販売承認を取得したことを発表した。
血友病Aは生涯続く希少疾患で、血液凝固因子の欠乏により血液が凝固する機能が損なわれ、関節における過度の出血や自然出血により関節障害や慢性疼痛が現れ、生活の質(QOL)が損なわれる恐れがある。血友病Aの重症度は血液中の凝固因子活性レベルで評価され、出血リスクと血液凝固因子活性レベルは逆相関の関係にある。
オルツビーオの効能・効果は「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」であり、本剤は、週1回の投与でその活性を週の大半にわたり正常~ほぼ正常範囲(40%超)に高く維持することができる、世界初で唯一の血友病A治療薬である。12歳以上の重症血友病A患者に対して、従来の血液凝固第VIII因子製剤による定期補充療法と比べ、有意に出血を減少させた。また、成人および小児の血友病Aにおける定期補充療法、出血時補充療法、ならびに周術期管理に使用できる。基本の用量は50IU/kgである(年齢や臨床状態、活動レベルによらず、あらゆる患者に対して適用)。
今回の承認は、NEJM誌に掲載された12歳以上の重症血友病A患者を対象としたピボタル第III相XTEND-1試験(結果)と、12歳未満の小児患者を対象としたXTEND-Kids試験(結果)を含む、重症血友病A患者から得られた良好な試験結果に基づく。
XTEND-1試験において、オルツビーオの週1回投与による定期補充療法は主要評価項目を達成し、重症血友病Aにおいて優れた出血抑制効果を示し、年間出血率(ABR)の平均値は0.71(95%CI:0.52~0.97)、ABRの中央値は0.00(Q1,Q3:0.00,1.04)であった。また、オルツビーオは重要な副次評価項目を達成し、前治療の既存の血液凝固第VIII因子製剤による定期補充療法との患者内比較でABRが77%減と有意な減少を示した(95%CI:58~87、p<0.001)。
小児を対象としたXTEND-Kids試験の最終結果では、オルツビーオの週1回投与を52週間受けた12歳未満の小児(73例)におけるABRの平均値は0.6(95%CI:0.4~0.9)、ABRの中央値は0(Q1,Q3:0.0,1.0)であった。XTEND-Kids試験の詳細な結果は、7月に開催された国際血栓止血学会(ISTH)年次総会で発表された。試験全体を通してオルツビーオの安全性プロファイルは確立されており、本剤の投与後に血液凝固第VIII因子に対するインヒビターの発現は認められず、発現頻度が10%以上の副作用は頭痛と関節痛であった。
サノフィの代表取締役社長である岩屋 孝彦氏は、「オルツビーオの承認取得は、血友病A患者にとって大きな前進となる。オルツビーオは、週1回の投与で1週間の大半にわたり血液凝固因子の高い活性レベルを維持できる医薬品であり、患者や医師が抱く血友病患者の生活のイメージが大きく変わる。サノフィは、オルツビーオをはじめとする革新的な数々の治療薬をさらに前進させ、世界中の希少血液疾患の患者の治療にパラダイムシフトを起こし、標準治療の変革をもたらせるよう尽力する」としている。
オルツビーオは、米国で2023年2月に承認されており、2017年8月にオーファンドラッグ、2021年2月にファストトラック、2022年5月には血液凝固第VIII因子製剤として初のブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されている。欧州では2019年6月にオーファンドラッグに指定され、2023年5月に承認申請している。
(ケアネット)