血友病Aの新規治療薬、既治療重症例の出血を低減/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/02/06

 

 既治療の重症血友病A患者の治療において、efanesoctocog alfa(エフアネソクトコグ アルファ、国内で承認申請中)の週1回投与は、試験開始前の第VIII因子製剤による定期補充療法と比較して、出血の予防効果が優れ、正常~ほぼ正常の第VIII因子活性と、身体的健康や疼痛・関節の健康の改善をもたらすことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAnnette von Drygalski氏らが実施した「XTEND-1試験」で示された。同薬は、von Willebrand因子(VWF)による半減期の上限を克服し、第VIII因子活性を高い状態で維持するよう設計された新たなクラスの第VIII因子補充療法薬。研究の成果は、NEJM誌2023年1月26日号に掲載された。

19ヵ国159例の第III相非盲検介入試験

 XTEND-1試験は、重症血友病A患者に対するefanesoctocog alfaの有効性、安全性、薬物動態の評価を目的とする第III相非盲検介入試験であり、日本を含む19ヵ国48施設で患者の登録が行われた(SanofiとSobiの助成を受けた)。

 対象は、年齢12歳以上で既治療の重症血友病A患者であった。被験者は、efanesoctocog alfa(50 IU/kg体重)の週1回静脈内投与による定期補充療法を52週間行う群(A群)と、同薬(50 IU/kg体重)のオンデマンド療法を26週間施行後に同薬(50 IU/kg体重)の週1回投与による定期補充療法を26週間行う群(B群)に分けられた。

 主要エンドポイントは、A群の平均年間出血回数(annualized bleeding rate:ABR)とされた。また、主な副次エンドポイントは、A群における定期補充療法中のABRと、試験開始前の第VIII因子製剤による定期補充療法中のABRとの患者内比較であった。

 159例が登録され、149例(94%)が試験を完遂した。A群が133例(平均[±SD]年齢33.9±15.3歳、男性99%)、B群は26例(42.8±11.7歳、100%)であった。

出血時投与でイベントの97%が消失

 A群では、ABR中央値は0.00(四分位範囲[IQR]:0.00~1.04)であり、推定平均ABRは0.71(95%信頼区間[CI]:0.52~0.97)であった。A群の平均ABRは、試験開始前の2.96(2.00~4.37)から開始後には0.69(0.43~1.11)へと77%低下(ABR比:0.23、95%CI:0.13~0.42)し、試験開始前の第VIII因子製剤による定期補充療法に対する、efanesoctocog alfaによる定期補充療法の優越性が示された(p<0.001)。

 試験期間中に全体で362件の出血イベントが発現したが、このうち268件(74%)はオンデマンド療法中のB群でみられた。出血の発現時には、efanesoctocog alfa(50 IU/kg)の1回の注射により、出血イベントのほぼすべて(97%)が消失した。

 薬物動態の解析では、efanesoctocog alfaの週1回投与による定期補充療法は、投与から約4日間は第VIII因子活性の平均値が正常~ほぼ正常(>40 IU/dL)の範囲内で、7日目には15 IU/dLとなった。半減期の幾何平均値は47.0時間(95%CI:42.3~52.2)と長かった。

 また、efanesoctocog alfaによる52週間の定期補充療法(A群)によって、Haem-A-QoLの身体的健康スコア(p<0.001)、Patient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)の疼痛強度スコア(p=0.03)、Hemophilia Joint Health Score(HJHS)の関節の健康(p=0.01)がいずれも有意に改善した。

 副作用プロファイルは許容できるものであった。全体で、第VIII因子インヒビターの発生(0%、95%CI:0.0~2.3)は検出されず、重篤なアレルギー反応、アナフィラキシー、血管内血栓イベントの報告はなかった。少なくとも1回のefanesoctocog alfaの投与を受けた159例のうち、123例(77%)で1件以上の有害事象が発現または増悪し、重篤な有害事象は15例(9%)で認められた。全体で、最も頻度の高い有害事象は、頭痛(32例[20%])、関節痛(26例[16%])、転倒(10例[6%])、背部痛(9例[6%])だった。

 現在、12歳以下の小児(XTEND-Kids)および長期的な安全性と有効性(XTEND-ed)を評価する臨床試験が進行中だという。

(医学ライター 菅野 守)

専門家はこう見る

コメンテーター : 長尾 梓( ながお あずさ ) 氏

医療法人財団 荻窪病院 血液凝固科