双極性障害のリスク基準を満たす患者の長期的な発症率

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/16

 

 双極性障害の発症を予測することができれば、予防的治療が容易になる可能性がある。リスク評価尺度の中でもBipolar At-Risk(BAR)は、臨床コホートにおいて最初の1年間での双極性障害発症を予測するうえで有用であることが示唆されているが、BARが長期的な発症と関連しているかは、明らかになっていない。オーストラリア・メルボルン大学のAswin Ratheesh氏らは、10~13年間のフォローアップ期間を通じて、BARと双極性障害発症との関連を評価した。その結果、メンタルヘルスに問題を抱えている人のうち、BAR基準を満たす人は、そうでない人と比較し、10年以上にわたり双極性障害の発症リスクが有意に高いことが確認された。JAMA Network Open誌2023年9月5日号の報告。

 2008年5月~2010年9月にオーストラリア・ビクトリア州メルボルンにあるTertiary Youth Mental Healthに援助を求めた15~25歳の気分障害、人格障害、薬物使用障害などの非精神病性の主要なメンタルヘルスの問題を抱える人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。研究は、2020年5月1日~2022年11月7日の期間に完了した。ベースライン時にBAR基準を満たしたリスク群および援助を求めた人の中で一致した対照群について、検討を行った。BAR基準には、閾値以下の躁状態、気分循環性の特徴、閾値以下のうつ状態、双極性障害の家族歴を含めた。主要アウトカムは、10~13年間のフォローアップ期間中における専門家による精神疾患簡易構造化面接法に基づく双極I型障害または双極II型障害の診断、オンラインで収集した自己申告情報、州内での精神保健サービスの利用状況とした。

 主な結果は以下のとおり。

・対象となる参加者69例のうち、フォローアップデータが入手可能であった人は60例(88.2%)であった。
・フォローアップ終了時の平均年齢は32.9±2.8歳、女性は49例(81.7%)であった。
・BAR基準を満たしたリスク群は28例、対照群には32例が含まれた。
・リスク群では、平均11.1±0.7年のフォローアップ期間中に8例(28.6%)が双極性障害を発症したが、対照群では1人も発症しなかった。
・双極性障害発症リスクは、対照群よりもリスク群で高かった(χ21=70.0、p<0.001)。
・双極性障害への発症は、フォローアップ期間の前半および後半で同様であった。

 著者らは「BAR基準を満たす人に対する長期的なモニタリングやサポートは、双極性障害の発症予防に寄与する可能性がある」とし、「臨床現場におけるBAR基準の実装によるリスク評価は、長期的な予後の評価に役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)