軽度認知障害(MCI)およびアルツハイマー病の予防や管理対策の開発には正確な疫学データが必要とされるが、日本ではこのようなデータが不足している。九州大学の福田 治久氏らは、日本における新規発症のMCIまたはアルツハイマー病患者の疾病負荷と進行について調査を行い、急速に高齢化が進む国においてMCIやアルツハイマー病は優先度の高い疾患であり、本結果は日本におけるこれらの疾病負荷や進行について重要な初の考察を提供するものである、とまとめている。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年9月9日号の報告。
2014~21年の17市町村の新規発症MCIおよびアルツハイマー病患者のレセプトデータを用いて、多地域コホート研究を実施した。患者の特徴を明らかにするため、地域(都市部、郊外、農村部)ごとに、発症時の患者の年齢、併存疾患、長期の要介護度を調査した。疾病負荷は、医療費と長期介護費を用いて、発症後1年、2年、3年間で推定した。新規発症のMCI患者におけるアルツハイマー病への進行と、新規発症のアルツハイマー病患者における死亡の評価には、カプランマイヤー曲線を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・MCI患者3,391例、アルツハイマー病患者5万8,922例を分析した。
・MCI患者とアルツハイマー病患者の医療支出は、1年目は高額であったが、3年目までに徐々に減少していた。
【MCI】1年目:1万3,035ドル、3年目:8,278ドル
【アルツハイマー病】1年目:1万5,858ドル、3年目:1万414ドル
・対照的に、日常生活支援である長期介護支出は、3年間で着実に増加していた。
【MCI】1年目:1,767ドル、3年目:3,712ドル
【アルツハイマー病】1年目:6,932ドル、3年目:9,484ドル
・発症後3年目に、MCI患者の30.9%がアルツハイマー病を発症し、アルツハイマー病患者の23.3%は死亡した。
(鷹野 敦夫)