双極性障害の治療コストは、地域的要因および普遍的要因と関連しているが、西欧諸国以外からのデータは、限られている。また、臨床的特徴と外来薬物療法のコストとの関連性は、十分にわかっていない。札幌・足立医院の足立 直人氏らは、日本人の統合失調症外来患者における治療コストとその後の臨床症状との関連性の推定を試みた。とくに、医療費の大部分を占め、近年増加傾向にある医薬品コストに焦点を当てて調査を行った。その結果、日本における双極性障害患者の1日当たりの平均治療コストは約350円であり、患者特性および精神病理学的状態と関連していることを報告した。Annals of Medicine誌2023年12月号の報告。
日本の精神科クリニックにおける双極性障害の多施設治療調査「MUSUBI研究」では、2016年に日本の精神科176施設の外来を受診した双極性障害患者3,130例を対象にレトロスペクティブに評価を行った。臨床的特徴および薬剤の処方状況を記録し、向精神薬治療の1日当たりの総コストを算出した。日本における双極性障害外来患者の年間医療コストは、人口統計に基づき推定した。1日当たりの医療コストと臨床的特徴との関連を評価するため、重回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・向精神薬の1日当たりのコストは、0~3,245円の範囲であり(平均349円、32.5米ドル相当)、指数関数的な分布がみられた。
・双極性障害外来患者にかかる年間コストは、約519億円(5億1,900万米ドル)であった。
・日本の双極性障害外来患者にかかる推定年間コストは、米国を除くOECD諸国と同等であり、一部のアジア諸国よりも高かった。
・重回帰分析では、向精神薬の1日当たりのコストと強い関連が認められた因子は、社会適応、抑うつ症状、年齢、ラピッドサイクラー、精神症状、他の精神疾患の併存であった。
(鷹野 敦夫)