超高齢社会になり、わが国では高齢ドライバーによる交通加害事故の報道を目にする機会は多い。加齢による認知機能や運動機能の低下が自動車の運転に影響することは論をまたないが、実際高齢者の自動車事故は、それ以外の年代の運転者と比較して多いのだろうか。筑波大学医学医療系の市川 政雄氏らの研究グループは、高齢者の運転免許返上の政策と社会的圧力について、運転者の年齢層別に自動車衝突事故(MVC)のリスクを比較分析してこの疑問を研究した。Journal of Epidemiology誌2023年10月7日の報告。
リスクの比較では、2016~20年に発生した交通事故総合分析センター(警察庁)のMVCの全国データを用い、免許運転者1人当たりの過失MVCの発生件数(MVC率)と、過失MVC1件当たりの致死傷者数と非致死傷者数を、過失運転者の性・年齢層別に検討。
主な結果は以下のとおり。
・高齢運転者のMVC率は中高年運転者より高かったが、若年運転者より低かった。
・高齢運転者のMVC事故率は中高年運転者より高く、若年運転者より低かった。
・高齢運転者のMVC事故1件当たりの負傷者数は、他の年齢層運転者より多くなかった。
・高齢運転者による死亡事故では、衝突された相手よりもむしろ運転者自身または同乗者が死亡する傾向にあった。
・全体として、これら結果は男・女の運転者の間でほぼ一致していた。
(ケアネット 稲川 進)