国立長寿医療研究センターの前島 伸一郎氏らは、認知症専門医が臨床現場で使用する評価ツール、その使用理由、評価に関連する因子を調査する目的で、認知症専門医へのアンケート調査を実施した。その結果、認知症患者に対する神経心理学的検査は、「病態生理の把握」と「診断補助」が主な目的であるにもかかわらず、多くの評価法が診断時間内に短時間で実施可能なスクリーニング法として選択されていた。また、生活に支障を来す認知症患者の治療において、今後の課題は、専門医が重要視する介護負担やQOLの評価が十分に行われていない点であることが明らかとなった。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2023年9月25日号の報告。
2021年9月15日~10月20日に、日本国内の認知症専門医1,858人を対象にアンケート調査を実施した。アンケートは、郵送またはWebアドレスからアクセス可能なWebフォームを用いて行った。
主な結果は以下のとおり。
・1,858人中574人(32.2%)がアンケートに回答した。
・ほぼすべての回答者が、神経心理学的検査の主な目的は、病態生理の把握、診断補助であると回答した。
・ほとんどの回答者が、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)の評価を重要な要素として特定していた。
・最も一般的に使用されている検査は、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、ミニメンタルステート検査(MMSE)であり、スクリーニングツールとして用いられていた。
・MMSE、時計描画テスト(CDT)、立方体透視図模写テスト(CCT)は、一般的な評価として専門医が直接実施していた。
・QOLと介護負担に関しては、あまり評価されていなかった。
(鷹野 敦夫)