医療現場のスティグマは、薬物使用者の生活に大きな影響を及ぼす。日本の医療現場での薬物使用者に対するスティグマに関して、定量的なデータは不足しており、その要因もよくわかっていない。横浜市こころの健康相談センターの片山 宗紀氏らは、薬物使用者に対するスティグマの現状とその要因について調査を行った。その結果、依存症専門医療機関の専門家が、薬物使用者に対して強いスティグマを示していることが明らかになったという。著者らは、スティグマへの対処および軽減には、包括的な教育プログラムや大規模な啓発キャンペーンが必要であると述べている。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月9日号の報告。
神奈川県、東京都、愛知県の5つの依存症専門医療機関で調査を行った。調査内容には、薬物使用者に対するスティグマ的態度、違法薬物使用に関する知識、薬物使用者との個人的および職業的な交流に関する質問を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・回答者の大部分は、薬物依存症は意志の強さで克服できる、または、単に道徳感の欠如によるものとは考えていなかった。
・しかし、回答者の大多数は、薬物使用者を信頼できず、容認できない、理解できないと見なしていた。
・臨床現場において薬物使用者による敵対的な行動の発生は限られているにもかかわらず、多くの回答者は薬物使用者を危険であると認識していた。
・多くの回答者は、自身や親族の薬物関連問題への支援を模索しておらず、リカバリーした薬物使用者と協同した人は半数未満であった。これはスティグマの軽減を示す潜在的な指標であると考えられる。
・依存症専門家は、法執行機関の関与は薬物使用者のリカバリーに寄与しないと認識していたが、依然として多くの専門家が、当局への報告は必要であると考えていた。
(鷹野 敦夫)