性差が精神疾患の病因および経過に重大な影響を及ぼすことは、脳解剖学、脳活動パターン研究、神経化学などのエビデンスで示されている。しかし、メンタルヘルス分野での性差に関する研究は十分ではない。スペイン・Universidad Cardenal Herrera-CEUのFrancisca Castellano-Garcia氏らは、物質使用障害(SUD)、有病率、薬物療法、メンタルヘルスの観点から、注意欠如多動症(ADHD)と診断された13~18歳の思春期患者における性差について検討を行った。その結果、思春期のADHDにおいて女性は男性よりも診断・治療が十分でない可能性があり、将来のさまざまな問題を予防するためにも、とくに思春期女性に対するADHDの早期診断は重要であることが示唆された。Brain Sciences誌2022年5月2日号の報告。
ADHDの診断にはDSM-IV、DSM-IV-TR、DSM-V基準を用いた。PubMed、Web of Science、Scopusより検索された21文献のナラティブレビューを行った。
主な結果は以下のとおり。
・思春期のADHDにおいて、女性は男性よりも物質使用のリスクが高いが、併存疾患の有病率についてのコンセンサスは得られなかった。
・ADHD女性は、不注意症状が多く秩序破壊的行動が少ないため、診断が十分ではなく治療頻度も低かった。
・ADHD女性では、認知機能および実行機能の低下が悪化することにより、とくに自傷行為の観点から物質使用の増加および機能低下を来している可能性がある。
・ADHDの早期診断は、とくに思春期女性において重要であり、物質使用、SUDの進展、自殺行動の早期予防に不可欠である。
(鷹野 敦夫)