冬季に向かい入浴する機会が増えてきている。わが国では入浴関連死が諸外国に比べて頻度が高いという報告もある。そこで、その疫学的特徴を明らかにし予防につなげるために、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科法医学分野の勝山 碧氏らの研究グループは、鹿児島県における入浴関連死の検案記録を調査した。その結果、入浴関連死の90%以上が65歳以上の高齢者であり、16~20時と通常の入浴時間の死亡が約半数を占めていた。Scientific Reports誌2023年2月8日に掲載。
入浴関連死の発生に関連する環境気温
研究グループは、入浴関連死の疫学的特徴を明らかにするために、2006~19年までに起こった鹿児島県における死亡の検案記録を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・2006~19年に入浴関連死は2,689例(男性1,375例、女性1,314例)発生し、交通事故死数(960例)の約2.8倍であった。
・年齢別には90%が65歳以上の高齢者で、自宅の浴槽内での発生がほとんどだった。
・発生時刻は、16~20時と通常の入浴時間が約半数を占めていた。
・入浴前に飲酒していた例は4.3%(115例)と少なく、高齢者の日常生活の中で突然起こっていることが判明した。
・従来の報告のように冬季の発生が多く、12~2月に約半数が集中してみられた。
・入浴関連死が発生した日の各環境気温(最高気温、最低気温、平均気温、日内気温差)との関係を解析すると、入浴関連死の発生と最高気温、最低気温、平均気温との間には有意な負の相関がみられた。
・入浴関連死の発生率が有意に高くなる環境気温(冬季に限る)は、最高気温が9.0~19.0(中央値13.5)℃、最低気温は 0.0~13.0(中央値 3.0)℃、平均気温は 4.5~15.5(中央値 9.0)℃であった。
以上から勝山氏らは「この結果に基づいて“警報システム”を確立し、危険な日には入浴を控えてもらうことができれば、入浴関連死を予防できるのではないか」としている。
(ケアネット 稲川 進)