高齢者の要支援・要介護度に応じた老人ホーム入所のリスク因子が信州大学医学部保健学科 佐賀里 昭氏らの研究で明らかとなった。PLoS One誌2023年1月27日号の報告。
高齢者の介護施設入所リスクを基本動作と日常生活動作(ADL)の観点から明らかにすることを目的とし、レトロスペクティブ研究が行われた。
A市における2016~18年の介護保険認定調査の要介護認定者のうちデータにアクセス可能であった1万6,865例の性別、年齢、世帯構成、要介護度などのデータを取得し、グループタイプを従属変数、基本動作得点とADL得点を独立変数として、多変量二項ロジスティック回帰分析を行った。要介護度に応じた因子分析では、参加者を要支援度1、2、要介護度1、2、要介護度3、4、5に分類し、在宅から介護施設への入所に関連する因子の検証を行った。
主な結果は以下のとおり。
・要支援度1、2では、基本動作としては片足立ちと移乗、ADLとしては排尿と洗顔の制限/支援の必要性が介護施設入所と関連していた。
・要介護度1、2では、基本動作として起き上がり・移動、ADLとして入浴・排尿・洗顔・整髪の制限/支援の必要性が介護施設入所と関連していた。
・要介護度3、4、5では、基本動作として座位と移動、ADLとして自食と排便の制限/支援の必要性が介護施設入所と関連していた。
作業療法士は、高齢者のADLや基本動作の低下に着目し、患者や家族、他の医療従事者に必要な情報を伝え、適切かつ迅速なケアを提供する必要がある。
(ケアネット 溝口 ありさ)