EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬のオシメルチニブと化学療法の併用療法は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善することが、国際共同第III相無作為化比較試験FLAURA2試験で報告されている(治験担当医師評価に基づくPFS中央値は併用群25.5ヵ月、単独群16.7ヵ月、ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.79)1)。本試験の日本人集団の結果について、小林 国彦氏(埼玉医科大学国際医療センター)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。
試験デザイン:
対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)のStageIIIB、IIIC、IVの未治療NSCLC成人患者557例(日本人94例)
試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例[日本人47例])
対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例[日本人47例※])
評価項目:
[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS
[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など
※:1例は治療開始前に死亡
日本人集団における主な結果は以下のとおり。
・日本人集団の患者背景は、併用群でEGFR遺伝子L858R変異が多かったが(併用群51%、単独群34%)、それ以外は両群で同様であった。日本人集団はPS 0が多く(全体集団はいずれの群も37%であったのに対し、日本人集団はそれぞれ53%、43%)、腫瘍径が小さかった(平均値は全体集団がそれぞれ65mm、64mmであったのに対し、日本人集団はそれぞれ48mm、51mm)。
・治験担当医師評価に基づくPFS中央値は、併用群が24.8ヵ月、単独群が16.4ヵ月であった(HR:0.49、95%CI:0.28~0.86)。
・OSはデータカットオフ時点で未成熟(成熟度:29%)であった。参考値ではあるが、データカットオフ時点のOS中央値は、併用群が31.9ヵ月、単独群が未到達であった(HR:0.70、95%CI:0.32~1.54)。
・奏効率は、併用群が87%(CRは0例)、単独群が72%(CRは0例)で、奏効期間中央値は、それぞれ23.3ヵ月、13.8ヵ月であった。
・Grade3以上の有害事象は併用群に多く発現したが(併用群47%、単独群13%)、治療関連死はいずれの群においても認められなかった。
また、全体集団におけるベースライン時の脳転移の有無別、EGFR遺伝子変異の種類別にみた治験担当医師評価に基づくPFSの結果も報告された。PFS中央値およびHR、95%CIは以下のとおり。
・脳転移あり集団:併用群24.9ヵ月、単独群13.8ヵ月(HR:0.47、95%CI:0.33~0.66)。
・脳転移なし集団:併用群27.6ヵ月、単独群21.0ヵ月(同:0.75、0.55~1.03)。
・exon19欠失変異集団:併用群27.9ヵ月、単独群19.4ヵ月(同:0.60、0.44~0.83)。
・L858R変異集団:併用群24.7ヵ月、単独群13.9ヵ月(同:0.63、0.44~0.90)。
本試験結果について、小林氏は「オシメルチニブ+プラチナ製剤+ペメトレキセドは、日本人においてもEGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の新たな選択肢となるだろう」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)