中外製薬は、未治療または治療歴の短い血液凝固第VIII因子に対するインヒビター非保有の重症血友病Aの乳児を対象とした第III相HAVEN 7試験の主要解析において、へムライブラ(一般名:エミシズマブ)の有効性および安全性が裏付けられたことを発表した。生後12ヵ月までの乳児において、ヘムライブラが臨床的意義のある出血コントロールを達成し、忍容性も良好であったことが示されたこの新しいデータは、2023年12月9日~12日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された第65回米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会で発表され、プレスプログラムにも採択された。
重症血友病Aによる乳児とその保護者や介護者への負担は大きい。これまでに複数の臨床試験により、早期からの出血抑制を目的とする治療が、長期にわたり転帰を改善し、かつ頭蓋内出血のリスクを低下させることが示されている。このことから、世界血友病連盟(WFH:World Federation of Hemophilia)の治療ガイドラインでは、定期的な出血抑制を目的とする治療を低年齢で開始することが血友病の標準治療とされている。ところが、多くの血友病Aの乳児では、生後1年までは出血抑制を目的とする治療が開始されていない。ヘムライブラは、すでに乳児に対しても承認、使用されており、出生時から皮下投与が可能である。また、維持投与においては複数のさまざまな投与間隔レジメンにより柔軟な治療選択が可能な薬剤である。
本剤の有効性、安全性、薬物動態および薬力学を評価する記述的な第III相単群試験であるHAVEN 7試験は、血液凝固第VIII因子に対するインヒビターを保有しない重症血友病Aの乳児を対象として、血友病Aコミュニティと協働して実施された。55例のデータを含む本解析結果において、追跡調査101.9週間(中央値)の時点で、治療を要する出血が認められなかった被験者の割合は54.5%(30例)、治療の要否にかかわらずすべての出血が認められなかった被験者の割合は16.4%(9例)であった。いずれの被験者でも治療を要する自然出血は認められず、治療を要した出血はすべて外傷性であった(46例[83.6%]で合計207件の出血が認められ、そのうち87.9%が外傷性)。治療を要する出血のモデルに基づく年間出血率(ABR:annualized bleeding rate)は0.4(95%信頼区間:0.30~0.63)であった。新たな安全性シグナルは認められず、本剤と関連のある重篤な有害事象、頭蓋内出血または死亡は報告されなかった。血液凝固第VIII因子インヒビター陽性となった被験者は3.6%(2例)であり、これは本剤の投与により第VIII因子製剤の使用が少なかったことが理由と推察された。また、抗薬物抗体陽性となった被験者はおらず、中間解析およびこれまでに実施された第III相HAVEN試験群の肯定的な結果と一致していた。
ASHでは、HAVEN 7試験におけるバイオマーカーの追加研究の結果も発表され、本試験の有効性に関する主要解析を支持するものであった。この追加研究により、乳児におけるヘムライブラの薬力学プロファイルは、これまでに、より年長の小児および成人の血友病Aで観察されたものと同様であることが示された。また、この年齢層においては本剤が結合する凝固因子の存在量が少ないものの、想定される薬力学的反応を示すことが明らかにされた。HAVEN 7試験の結果は、より広範に実施されたピボタルなHAVEN試験群から得られたデータを補完し、乳児における血友病A治療の進展、および出生時から予防投与を開始することの影響に関する洞察を提供するものである。主要解析後には7年間の追跡調査期間が設けられている。
中外製薬 代表取締役社長 CEOの奥田 修氏は、「重症血友病Aに対する出血抑制を目的とした治療において、静脈内投与が困難な乳児に対し、皮下投与可能なヘムライブラは治療負担を軽減する選択肢となります。今回の試験では、乳児に対して初めて、ヘムライブラが有効な出血コントロールを示しました。これは、これまでに実施された臨床試験において示された幅広い年齢層におけるデータを補完し、ヘムライブラによる乳児における出血抑制を目的とした治療をより早期に開始することを支持するものです。本剤を必要とする方々により安心してお使いいただけるよう、長期データの収集をはじめ、引き続きエビデンスの構築に努めてまいります」と語っている。
(ケアネット)