新生児、小児では消化管は発達途上であり、アレルギーを発症しやすいことが知られている。一方でわが国には、新生児、乳児の消化管アレルギーについて全国を対象にした疫学研究は行われていなかった。そこで、国立成育医療研究センター研究所 好酸球性消化管疾患研究室の鈴木 啓子氏らの研究グループは、日本で初めて2歳未満の新生児、乳児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)に関する全国疫学調査を実施。その結果、新生児、乳児の消化管アレルギーの約半数は生後1ヵ月までの新生児期に発症していることが判明した。Allergology International誌オンライン版2023年10月30日号からの報告。
消化管アレルギーの原因食物の1位は牛乳由来ミルク
鈴木氏らは、2015年4月~2016年3月に消化管アレルギーを発症した2歳未満の新生児、乳児の患者について、日本全国の病院および診療所に質問票を送付(アンケート回答率は病院67.6%、診療所47.4%)。医師が診断した2歳未満の消化管アレルギーの患者数、パウエルの診断基準への該当状況、初期症状に基づき4つのグループへの分類、発症日齢、合併症、原因食物について集計、解析した。
分析対象はパウエルの基準のステップ3までを満たした「本症の可能性が高い」患者群402例と、そのうち「経口食物負荷試験などで診断が確定した」患者群80例。
主な結果は以下のとおり。
・新生児、乳児の消化管アレルギー患者の約半数は新生児期に発症している(発症の中央値が生後30日)ことが確認された。
・グループ1(嘔吐あり、血便あり)の発症は出生後7日目(中央値)と、4つのグループの中で最も早いことが確認された。
・グループ1(嘔吐あり、血便あり)とグループ3(嘔吐なし、血便なし、一方で慢性下痢や体重増加不良を起こす)は重症が多く(それぞれ約25%と約23%)、腸閉塞(それぞれ約16%と約11%)、深刻な体重減少(それぞれ約14%と約23%)などもみられ、とくに注意が必要と考えられた。
・原因食物は牛乳由来ミルクが最も多くみられたが、母乳、治療用ミルク、大豆、鶏卵、米により発症した患者もいた。
本結果から、胎児期および新生児期における早期診断のシステム構築、病態の研究が重要と考えられる。
(ケアネット 稲川 進)