ニトログリセリンは急性冠症候群(ACS)の第1選択薬として長い間使用されてきたが、ACSの転帰改善のための使用を支持する研究は限られている。また、高齢患者の増加や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と最適な薬物療法(OMT)などのACS管理の進歩により、PCI後の転帰におけるニトログリセリンの有効性を再評価する必要性が高まっている。今回、宮崎大学の小牧 聡一氏らが単施設での後ろ向き研究で検討した結果、とくに75歳以上の高齢患者においてPCI実施前のニトログリセリン投与が血圧低下および有害な臨床転帰と関連することが示された。Open Heart誌2024年1月11日号に掲載。
本研究は、2013年1月~2021年5月に宮崎県立延岡病院に入院したACS患者を対象とした単施設観察研究である。ACSに対するPCIを受けた患者947例について、PCI前にニトログリセリンを投与していた群(289例)としていなかった群(658例)に分け、1年以内の主要有害心血管イベント(MACE:全死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心不全による再入院の複合)の発生率を比較した。
主な結果は以下のとおり。
・PCI前の収縮期血圧の中央値(四分位範囲)は、ニトログリセリン投与群で132.0(110.0~143.5)mmHg、非投与群の134.0(112.0~157.0)mmHgより有意に低かった(p=0.03)。
・多変量Cox回帰分析では、PCI前のニトログリセリン使用はMACEの発生率と独立した関連を示した(ハザード比:1.57、95%信頼区間:1.09~2.28、p=0.016)。
・ACSに対するPCI後1年間のMACEの発生率は、患者全体においてニトログリセリン投与群で非投与群よりも有意に高かった(p=0.024)。しかし、この傾向は75歳以上でのみ認められ(p=0.002)、75歳未満では認められなかった(p=0.773)。
(ケアネット 金沢 浩子)