トルコ・University of Health SciencesのAysegul Akkan Suzan氏らは、早期アルツハイマー病患者の歩行を評価するために用いられる特定の身体能力測定と、多剤併用との関連を評価する目的で本研究を実施した。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2023年12月11日号の報告。
3次医療センターの認知症外来クリニックで横断的研究を実施した。1日当たり5剤以上の薬物治療を多剤併用の定義とし、対象患者から中等度~重度の認知症患者は除外した。身体的パフォーマンスステータスの評価には、通常歩行速度(UGS)、Timed Up & Go(TUG)テスト、椅子立ち上がりテスト(CSST)を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者134例(女性の割合:67.9%、平均年齢:80.2±7.9歳)のうち、75例(56%)が多剤併用患者であった。
・多剤併用患者はそうでない患者と比較し、身体的パフォーマンスが不良であった(UGS:p=0.005、TUG:p<0.001、CSST:p<0.001)。
・多剤併用患者では、次のパラメーターが有意に高かった。
BMI(p=0.026)
高血圧(p=0.013)
糖尿病(p=0.018)
虚血性心疾患(p<0.001)
心房細動(p=0.030)
うつ病(p=0.012)
甲状腺機能低下症(p=0.007)
・多変量解析では、多剤併用と独立して関連していた因子は次のとおりであった。
UGSの遅さ(オッズ比[OR]:1.248、95%信頼区間[CI]:1.145~1.523、p=0.007)
TUGの長さ(OR:1.410、95%CI:1.146~1.736、p=0.001)
CSSTの長さ(OR:1.892、95%CI:1.389~2.578、p<0.001)
著者らは、「早期アルツハイマー病患者において、多剤併用と身体的パフォーマンス低下との関連が示唆された。高齢のアルツハイマー病患者における多剤併用および薬剤サブグループと身体的パフォーマンスとの関係を調査する、長期プロスペクティブ研究の実施が望まれる」としている。
(鷹野 敦夫)