空間ナビゲーションは、アルツハイマー病において早期に影響を受ける海馬-嗅内皮質回路機能の重要な基盤となっている。アルツハイマー病の病態生理は、睡眠/覚醒サイクルと動的に相互作用し海馬の記憶を損なうというエビデンスの報告が増えている。ドイツ・University Hospital of Schleswig HolsteinのAnnika Hanert氏らは、早期アルツハイマー病患者の記憶定着と睡眠依存性との関連を評価した。Neurobiology of Disease誌2024年1月号の報告。
症候性アルツハイマー病コホート(12例、平均年齢:71.25±2.16歳)における睡眠依存性の影響を解明するため、夜間睡眠の前後における、仮想現実タスクによる海馬の場所記憶および単語ペア連想タスクによる言語記憶を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・アルツハイマー病患者では健康な対照群と比較し、言語タスクにおいて夜間の記憶保持が損なわれているとともに、睡眠紡錘波の活動の減少(速い睡眠紡錘波の振幅低下、p=0.016)および遅い振幅(slow oscillation)の持続時間増加(p=0.019)との有意な関連が認められた。
・紡錘波の密度の高さ、遅い振幅の下方から上方への移行速度の速さ、遅い振幅とネストされた紡錘波の間の時間遅延は、対照群では記憶機能の向上を予測したが、アルツハイマー病患者では予測しなかった。
著者らは、「アルツハイマー病における記憶処理および記憶定着は、ノンレム睡眠中の振幅ダイナミクスの機能不全および紡錘波の遅い振幅との結合を反映して、わずかに損なわれていることが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)