超過勤務が多くなりがちな医師は、燃え尽き症候群(バーンアウト)のリスクが高いという報告は数多い。また、労働者全般を対象とした研究では、休暇中に仕事を完全に切り離すことも重要であり、生産性を向上させ、精神的疲労を軽減させることが報告されている。医師における休暇の取得と休暇中の労働は、燃え尽き症候群や職業的充実感とどのように関連しているのか。米国医師会のChristine A. Sinsky氏らによる研究の結果がJAMA Network Open誌2024年1月2日号に掲載された。
研究者らは米国の医師を対象に、2020年11月20日~2021年3月23日に調査票による横断調査を実施した。データ解析は2023年3~7月に実施した。過去1年間に取得した休暇日数、休暇中に患者ケアおよびその他の専門的業務に費やした時間(1日当たり)、休暇中の電子カルテ(EHR)に来た業務のカバー率、休暇取得の障壁についての情報が収集された。バーンアウトはMaslach Burnout Index、職業的充実感はStanford Professional Fulfillment Indexを用いて測定した。
主な結果は以下のとおり。
・休暇に関する調査に回答した米国人医師3,024人(年齢中央値50歳、男性62%)が対象となった。過去1年間に15日以下の休暇を取得した医師は59.6%で、うち6~15日が39.7%、5日以下が19.9%だった。年間15日以上の休暇を取得した医師の割合が高い診療科は麻酔科、放射線科で、最も低いのは救急科だった。
・その一方で、70.4%の医師が休暇中に患者ケアに関連した業務を行った、と回答しており、うち休暇日1日当たり30分以下の勤務が37.3%、30~60分が18.3%、60~90 分が7.3%、90分以上が7.4%だった。
・休暇中、「電子カルテの業務が完全にカバーされている」と報告した人は半数以下(49.1%)だった。
・休暇取得にまつわる懸念として、「臨床をカバーしてくれる人を見付けること」「経済的な懸念」に対して「かなりある」「非常にある」(5段階の選択肢)との回答は、年間15日以上の休暇を取得する可能性の低下と関連していた。
・「年間15日以上の休暇取得」「休暇中の電子カルテ業務の完全カバー」との回答は、バーンアウト率の低下と関連していた。
・一方、休暇日1日当たり30分以上を患者ケアに関連した業務に費やすことは、バーンアウト率の上昇と関連していた。
著者らは「休暇の取得日数と、休暇中に患者関連の業務を行うことは、医師の燃え尽き症候群と関連していた。医師が適切に休暇を取得し、臨床責任をカバーできるシステムレベルの取り組みを行うことが、医師の業務負担を軽減させる可能性がある」としている。
(ケアネット 杉崎 真名)