オシメルチニブはFLAURA試験(未治療のEGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん[NSCLC]患者を対象に、オシメルチニブと他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を比較した試験)の結果1)に基づき、EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移NSCLC患者の1次治療に広く用いられている。実臨床においては、臨床試験への登録が不適格となる患者にも用いられるが、その集団における治療成績は明らかになっていない。そこで、カナダ・BC Cancer AgencyのJ. Connor Wells氏らがリアルワールドデータを用いて解析した結果、半数超の患者がFLAURA試験への登録が不適格であり、不適格の患者は適格の患者と比較して大幅に全生存期間(OS)が短かったことが示された。本研究結果は、Lung Cancer誌オンライン版2024年3月4日号で報告された。
本研究は、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学附属バンクーバー総合病院において、1次治療でオシメルチニブが投与されたEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異、L858R変異)陽性の進行・転移NSCLC患者311例を対象に実施した。FLAURA試験への登録の適否で対象患者を2群に分類し(適格群/不適格群)、OSを比較した。なお、ECOG PS2以上、症候性またはステロイド治療を必要とする脳転移を有する、ヘモグロビン値90g/L未満、血小板数100×109/L未満、クレアチニンクリアランス50mL/min未満のいずれかを満たす患者をFLAURA試験への登録が不適格と定義した。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者の44%が適格群、56%が不適格群に分類された。
・追跡期間中央値26.5ヵ月時点における全体集団のOS中央値は27.4ヵ月であった。
・FLAURA試験への登録の適否別にみたOS中央値は、適格群が34.2ヵ月であったのに対し、不適格群では15.8ヵ月と有意に短かった(p<0.001)。
本研究結果について、著者らは「FLAURA試験への登録が不適格であった患者が半数以上を占めたことから、本研究におけるOS中央値は27.4ヵ月であり、FLAURA試験の結果(38.6ヵ月)と比較して約1年短かった。しかし、適格群のOS中央値は34.2ヵ月であり、FLAURA試験の結果と同様であった。不適格群の患者は、ベースライン時の疾病負荷が高く、予後不良となった可能性がある。これらの患者の予後を改善するためには、さらなる研究が必要である」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)