EGFR変異陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブがOS延長/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/12/10

 

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を有する未治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、オシメルチニブは他のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に比べ、全生存(OS)期間を有意に延長することが、米国・エモリー大学のSuresh S. Ramalingam氏らが行った「FLAURA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月21日号に掲載された。第3世代の不可逆的EGFR-TKIであるオシメルチニブは、EGFR活性型変異およびEGFR T790M抵抗性変異の双方を選択的に阻害する。本試験の主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間はすでに報告されており、オシメルチニブ群で有意に延長した(18.9ヵ月vs.10.2ヵ月、ハザード比[HR]:0.46、p<0.001)。

主な副次評価項目であるOSの結果を報告
 本研究は、日本を含む29ヵ国132施設が参加した二重盲検無作為化第III相試験であり、2014年12月~2016年3月の期間に患者の割り付けが行われた(AstraZenecaの助成による)。今回は、主な副次評価項目であるOSの結果が報告された。

 対象は、年齢18歳以上(日本は20歳以上)、EGFR変異陽性(エクソン19欠失変異、L858R変異)の局所進行または転移を有する未治療のNSCLC患者であった。中枢神経系への転移が確認または疑われる患者も、神経学的に病態が安定している場合は組み入れられた。

 被験者は、オシメルチニブ(80mg、1日1回、経口)または他の経口EGFR-TKI(ゲフィチニブ[250mg、1日1回]、エルロチニブ[150mg、1日1回])を投与する群(比較群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行、許容できない毒性または患者の同意が撤回されるまで継続された。比較群は、病勢が進行した場合、非盲検下にオシメルチニブへのクロスオーバーが許容された。

死亡リスクが20%低下、アジア人では有意差なし
 556例が登録され、オシメルチニブ群に279例、比較群には277例(ゲフィチニブ183例[66%]、エルロチニブ94例[34%])が割り付けられた。治療期間中央値はオシメルチニブ群20.7ヵ月(範囲:0.1~49.8)、比較群11.5ヵ月(範囲:0.0~50.6)であった。データカットオフの時点で、それぞれ22%、5%の患者が治療を継続していた。

 データカットオフ時に321例が死亡していた。OSの追跡期間中央値は、オシメルチニブ群35.8ヵ月、比較群27.0ヵ月であった。OS期間中央値は、オシメルチニブ群が38.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:34.5~41.8)と、比較群の31.8ヵ月(26.6~36.0)と比較して有意に延長した(死亡のHR:0.80、95.05%CI:0.64~1.00、p=0.046)。

 1年OS率は、オシメルチニブ群が89%、比較群は83%、2年OS率はそれぞれ74%、59%、3年OS率は54%、44%であった。また、試験薬の投与を継続していた患者の割合は、1年時がオシメルチニブ群70%、比較群47%、2年時はそれぞれ42%、16%、3年時は28%、9%であった。

 OSのサブグループ解析では、事前に規定されたサブグループのほとんどで、オシメルチニブ群の利益が一貫して大きかった。アジア人(1.00、95CI:0.75~1.32)と非アジア人(0.54、0.38~0.77)は、HRの差が最も大きかった。

 治療中止後の1回目の後治療は、オシメルチニブ群が48%、比較群は65%が受けていた。比較群の治療中止例の47%(85/180例)がオシメルチニブの投与を受けており、これは全体では31%(85/277例)に相当した。

 Grade3以上の有害事象の発生率は、オシメルチニブ群が42%、比較群は47%であった。重篤な有害事象は両群とも27%で認められた。駆出率低下がオシメルチニブ群14例(5%)、比較群5例(2%)で、心電図上のQT延長がそれぞれ40例(14%)、14例(5%)で報告された。前回の解析以降に、新たな間質性肺疾患および肺臓炎の報告はなかった。致死的有害事象は、オシメルチニブ群9例(3%)、比較群10例(4%)に認められ、このうち担当医が治療関連と判定したのはそれぞれ0例、2例だった。

 著者は、「比較群の約3分の1が、オシメルチニブへクロスオーバーしたにもかかわらず、オシメルチニブ群でOS期間中央値が6.8ヵ月延長し、死亡リスクが20%低下した。また、治療期間はオシメルチニブ群のほうが長かったにもかかわらず、安全性プロファイルは両群でほぼ同等であった」としている。

(医学ライター 菅野 守)